『土が語る』(非売品・絶版)【全文限定公開中】 - 出版物一覧

土は語る~黄金律と息吹農法~

井上 錦一 著

レタス栽培比較試験(ワグネルポット栽培)

息吹LD 施用区の根の成長

▲息吹LD 施用区の根の成長

無処理区の根の成長

▲無処理区の根の成長

ワグネルポットによる試験(平成16 年3 月31 日)

1. 施用区の方が全体にバラツキが少ない。
2. 葉部結球が良い。
3. 根部は白く多細根型。
4. 土がサクサクとしていた。

岐阜大学 応用生物科学部
福井 博一 教授 御指導

 

水耕栽培での比較(左側:慣行区 右側:息吹区)

地上部

生産者の苦労が出ている

▲生産者の苦労が出ている

収穫最後まで活力持続

▲収穫最後まで活力持続

果実部

良いものを作る気持ちは充分

▲良いものを作る気持ちは充分

収量と品質の両立

▲収量と品質の両立

根部(裏返し)

スライムも多い

▲スライムも多い

多細根で白い根

▲多細根で白い根

平成15 年9 月〜平成16 年7 月

  • 愛知県海部郡 ハイポニカ式 1 棟10a
  • 貯水タンク 10??  に、息吹 LD 3kgをネットに充てん。

黄金律・水稲(大学卒の稲穂)

平成16 年 滋賀県産コシヒカリ 息吹LD 10a 当り300g 育苗箱

平成16 年 滋賀県産コシヒカリ
息吹LD 10a 当り300g 育苗箱

施用

  • 多収穫、豊作田の稲穂。
  • 1 株中の最長穂の2 次しこうを調査すると、6・3・3・4 の粒数が見受けられる。
  • 4 粒の登熟歩合を高めることが、高度な農業技術となる。
    (P61 参照)

まえがき

 農業ほど面白くて、奥行きのある仕事はない。

しかし、誤解に満ち満ちた面も多い。
 毎日、表情を変える植物を相手にして、上手くいっているときは、してやったりと。

逆のときはすごく落ち込む。
 外側から眺めている人にとっては、いつも同じようなことをしているように見えている。
この落差はどこから来るのだろうか?
 キャビン付きコンバインで収穫作業をしている人は、高級外車を乗り回す若者より、充実感があるというのに。

 

 作物が育つには、秒単位のスピード感はないかもしれないが、結構、興奮感もある。
 農業は人が生きて行くための、必要産業でありながら、日本では、少しないがしろにされていないだろうか。
 中山間地の産業の少ないところでは、農業がなくなれば地域生活も消滅してしまう。
 私は、岐阜市生まれで、親父で三代続いた八百屋の長男の立場にあった。

そんな自分が、何の因縁か、土改剤屋を始めて、二十年となった。
 今回いろいろな見聞を書き留めておいたものから、その一部を文章にしたものが、

この「土が語る」副題(黄金律と息吹農法)である。
 私の観察間違いならともかく、実際に見聞したことをベースに記述したので、少しは共感していただけると思う。

 

 この企画は、汎陽科学(株)設立満二十周年の記念として、書き置くことにした。
 改めて、小生を支えて下さった木下新三相談役や、株主、お取引先の皆様、

素人の私を良く導いて下さった先生方や、特に生産農家の方々には、

どれだけ頭を下げても足りない気持ちで一杯である。

そして、社員や家族の協力には、本当に有難く思っている。
 これからもご指導よろしくお願いしたい。
 なお、製作にあたって、協同印刷の曽我さん達のご協力、誠にありがたく感謝している。

 

平成十六年十月五日

目次

第一章 農業閑話

誤解一杯の農環境

 農業は第七次産業・8
 東北農業は日本経済と連動している・10
 かきくけこの時代・12
 米中国交回復の手土産・14
 子供の泥遊び・16
 コシヒカリが支える公害防止・18
 フカとサメ・20
 生産者の興味、消費者の思惑・22

作る人の楽しみ

 上農、中農、下農・24
 農家が頭を下げる相手・26
 ピッグ・サイクル・28
 下請け農業からの脱皮・30
 農業は儲かるが農家は?・32
 一円ケチって十倍の損・34
 魔の金曜午後三時・36
 跡継ぎのできる農家・38
 定年帰農・40

食べる人の喜び

 宇宙飛行士の食事・42
 米飯給食の味・44
 神話 曲がったキュウリ・46
 料理長の眼力・48
 誰もコメを食べていない・50

第二章 黄金律と息吹農法

黄金律(おうごんりつ)

 黄金律とは・54
 黄金律の発見・55
 黄金律を知っている人・56
 なぜ黄金律か・58
 黄金律の実際・59
 黄金律・根・59
 黄金律・茎・60
 黄金律・花・61
 黄金律・果実・61
 黄金律・色彩・62
 黄金律・実・63
 黄金律・付記・64

息吹農法

 第三世代の資材・66
 息吹農法とは・70
 息吹農法原料と原理・72
 雨降って地固まる・74
 なぜ無くならない連鎖障害・76
 息吹の使い方とポイント・78
 作物別の面白さ・84
  稲穂編・86
  葉菜類・88
  果樹類・89
  果菜類・90
  根菜類・92
 糖度だけが味ではない・94

第三章 息吹農家賛歌

 土改剤屋と呼ばれて・98
 赤松忘国論・100
 節水栽培の落とし穴・102
 薬臭くないセロリ・104
 チョット信じられない話・106
 目の痛くない玉葱・108
 野菜が語る、食べる喜び・110
 息吹のファンだよ・113

第一章 農業閑話

誤解一杯の農環境

農業は第七次産業(P8~P9)

18世紀の学派による、自然科学の系統分類手法は、産業の分類法にまで影響を与えてきた。
誰でも知っている、第一次産業・農林水産鉱業、第二次産業・加工業、第三次産業・サービス業というものである。
この分類は現代社会では的外れとなっている。大手商社の部長が、何かの時に、「農業は第七次産業である、1+2+3 の上であるから七、すなわち第七次産業だ」と言っていた。
私も考え方は同じである。
早い話が、第一次産業は地球からの資源の収奪型であるとするならば、農業には当てはまらない。
同じ場所で繰り返し再生産できるし、努力によっては付加価値が付いたり、観光農園などというのは典型的なサービス業ではないか。
そこで私は、農業を始原産業と分類したら、スッキリするのではないかと思う。
衣食住の中でも「腹が減っては戦はできぬ」とも言うし、その上畑では、毎年毎作生産物の種類や品質が一緒とはいえない。
社会科学者が何と言おうと、農業を始原産業と分類し直して下さい。
すると何が起きるか?
労働法の大家であった松岡三郎先生は「何が彼女をそうさせたか」と動機付けの前にその原因を考えなさいと言っていた。
先ず分類を変えると、政策や行政の対応が間違いなく変わるのである。
どうしてかと言えば、社会のリーダーの立場にある人々は、それらの変化に便乗するのがうまいからである。
だから出世できるのであろう。
具体的には、土地政策による地域振興や付加価値型農業、生産から店頭販売に至るまでの総合企業の出現等が可能となる。
個人でも気持ちを変えれば、行動も変わるに違いない。
やれ農水省だとか経産省だとか、縄張りを言ってばかりでは恥をかくことになろう。

東北農業は日本経済と連動している(P10~P11)

全くもって別件で、食品業界の有名な経営者にお会いした時の事である。
その方は政府の農業関係の審議会委員という立場にあり、話の中で、私が現場を良く知っているようだからと、おだてられてレポートを提出した事がある。
今から2〜3年前のことで日本経済もデフレのどん底という状況ではなかったか。
私は何項目かに分けて報告書を作った。
当然、農業システムにおける国内の問題点は、言い尽くされていることも含めて、かなり辛口に報告したつもりである。
それに付け加えて、小見出しの『東北農業が日本経済と連動している』と言う事を強調しておいた。
レポートがお役に立ったか否かは判らない。
これは、農業というものが重要な産業であり、農業だけが経済的見地からしても、孤立して存在しているのではないという事である。
当然であろう。リンクしているのであるから、因果関係というより、東北農業と日本経済は全く同調していると見るべきである。
この点を経済学者も完全に見落としていると思われる。経済政策のブラインド(盲点)である。
例えば、東京都内でマンションを購入した若夫婦の支払いのための頭金は、何処から出てきたか?
統計では一部借入金となってはいても、「実は実家の両親が畑で汗水流して稼いだ野菜の売上代金」であったりするのである。
そしてその借入金の大多数は、金銭の形では、親の元へは永久に返済されない率の方が高い。
出稼ぎ現場と、耕運機の支払い決済金との連動。電力や石油化学工場、大手食品工場の産廃が、畑に大量に還元されている現状等。
この同調システムを、健全で有効な流れとして生かして欲しい。

かきくけこの時代(P12~P13)

軽妙、洒脱な話し方で著名な、三重県鳥羽水族館の中村館長さんが話しておられた事である。
現代社会は(か)環境、(き)規則緩和、(く)食い物、(け)健康、(こ)高齢化、が鍵になる言葉だそうだ。
これは真に農業にズバリ当てはまることである。
循環型安全農業、中央卸売市場の手数料自由化問題等、食と健康の因果関係、そして農家の高齢化と後継者不足といえる。
医食同源、身土不二、等の環境と健康を表現する農作物も出回っているくらいである。
そのような状況は誰もが認めざるを得ない。問題は、だったらどうする、どのような方向へ導いていくのが良いか、ではないか。
各々の立場にある指導者は、自分の家庭での問題が社会全体でも共通に起きている現象と捉えて欲しい。
土いじりをしたこともない人から見れば、農業は単純で知恵を働かせていない仕事に見えるかもしれない。                               
いや、決してそうではない。
予測違いの天候や、目に見えない土壌条件、はたまた、やっと生産出荷しようとしたら、大豊作で価格下落。「ああ、やってはいられない」と、グチッてもいられない。
どんな仕事でも、状況、立場は違っても予定外の結果は付き物なのである。
ところが、農業はその予定外を味方につけてしまう人達の独壇場となっている。
例えば、高齢化といっても自分の年齢、体力、家族構成にあわせて農業経営が永遠に出来る。定年無しである。所得の手段も近年は通信、輸送の発達や直売場が増え、何でもござれ、となってきている。
まず、農業は楽しい。やりがいがある。少々の苦しみは、どんな仕事にも付き物と割り切る。如何ですか。

米中国交回復の手土産(P14~P15)

ベトナム戦争終結後の昭和五十四年に、日中国交の正常化が始まった。

日本に先を越された米国は頭ごなしに行動をする日本の時の総理田中角栄氏を、いわゆるロッキード事件ということで引きずりおろしたという説があった。
そして後追いであるが、アメリカ大統領も中国を訪問し、米中国交回復となっていったという歴史の証言がある。
当時の裏話に、アメリカの中国訪問時のお土産は、高価な美術品や工芸品等を想像するのが普通であろうが、

実は1式200万円位のパン焼き機械だったと、新聞に載っていた。
いろいろなお土産と共に随行の経済人には、農業関係者も含まれていたことも後で知った。
パン食を普及させれば、肉食も増えるし、畜産が増えればカロリー比率からして、穀類の需要も大幅に増える、という単純で、しかし、大掛かりな発想で行動している。
アメリカという国は、本当にすごい国であると思う。
戦後育ちの私は、学校給食が開始され、脱脂粉乳のミルクとパン食に慣れさせられた。
小六の時、児童会の見学に来た全米PTA会長は、女性であったのもビックリした。
児童会長をしていた私は、何故女性なのかを質問してみた。
東京オリンピックの実況記録映画でも、至る所にコーラのメーカーの看板が出てくるので、指揮を執った市川昆監督も驚きだったとか。
中国では、ハンバーガーチェーンが大好評であるのも、単なる流行位にみるのではなく、アメリカの食糧政策の奥の深さに一考する必要がありそうだ。
要するに、日本人の感覚とはスケールが違う。
そうそう、北朝鮮へ食糧人道支援の穀物も日本の港から船積みされるが、生産国と生産物の中身に注意を払ってみるのも面白い。
すべて日本産だと思っている人は、平和主義者である。

苗半作の違い「キヌヒカリ」(平成15 年8 月 滋賀県)

苗半作の違い「キヌヒカリ」
(平成15 年8 月 滋賀県)

右側:息吹区、分茎旺盛で、消化吸収力が高いので、
早く葉色の変化が起きる

雨除けほうれん草(平成16 年8 月 岐阜県高山市)

雨除けほうれん草
(平成16 年8 月 岐阜県高山市)

中心から外側まで揃っている

子供の泥遊び(P16~P17)

季節によって、幼稚園児や小学生が、芋掘り作業や田植えを手伝ったりする事が、ローカルニュースとして報じられる事がある。特に、田植えのニュースでは、決まって農作業の大変な事を体験した、というような記事内容となっている。
私は新聞記者さんに会ったときは、必ず直言するのだが、子供たちは楽しんでやっているのだから、妙な先入観で原稿を作らないで下さいよ、と提案する。
休日に、子供農業教室を開いて、都会の児童に田や畑に触れる機会を作るボランティア組織も各地にあるようだ。子供を送り出した親も、マインドコントロールされてしまって、やっぱり農業は大変だなあと上乗せされる。
冗談じゃありません。今どき一株一株手植えをするような稲作農家は希少ですよ。
最近では機械で畑ならぬハタ織りのごとく、田植えがなされる。コンバインはキャビン付きでテレビやラジオ、クーラーも着いており、それこそ電話が付いていないくらいである。
作付面積の多い生産者となると、外国産メーカーのトラクターを、二階から見下ろすような高さの運転席で操縦をしている。これらはそんなにまれなケースではない。
耕作をして、鋤や鍬の使い方に親しませるのも良いが、近代化農業の誤ったイメージを植え付けてしまうのはいかがなものか。
食の大事さ、有難さを畑作業に親しませながら、体験させる事は主催者にも努力がいる。
この親切心は、多くの子供たちに、全く逆の効果を果たしていることに気付くべきである。
古い話だが、高校時代には、母校の小学校のプール開きに地元の兵藤秀子先生と一緒に模範泳法をしたことがある。数年後に、名古屋の水泳名門校の女子選手が、トップクラスの成績を上げた時のインタビューに、水泳を始めたきっかけは、小学生の頃、プールサイドで我々の泳ぎを見たのがきっかけと話していた。
大切なのは、良いものを見せる。感動を伝えることである。
農業の辛さばかり教えてないで、楽しさ、奥の深さ、場合によっては都会の子供のウサギ小屋的住宅より、高価な仏壇やシルクの絨毯のある家や部屋も案内してあげていただきたい。
将来の植物学者を育てたり、農家に嫁入り希望したりする女性への前宣伝だと思って。

コシヒカリが支える公害防止(P18~P19)

循環型農業といって、有機栽培の真髄のように思っている人が多い。
特に行政では生ごみ対策にコストが掛かるため、生ごみを堆肥にと推進する政策も多い。
循環型農業の美名のもとに、畑が手を変えた廃棄物の捨場と勘違いしないで頂きたい。
公害対策の第一は、発生源で対処する。
第二は、種類別に区分別する事が一番効率の良い方法である。 
水処理の場合でも、まとめて終末処理場を作る等、家庭排水も産業排水も合併して処理という方法は無理が多い。
産業廃棄物の多くも畑に還元されている。
コンビナートの排煙脱硫装置から出てくる、中和した石灰性のもの、食品工場、製薬工場等から出てくる、かなりのものが、畑に土作りの「美名」のもとに分散されている。
財界人は自動車や電気製品を、アメリカ等の先進国に売り、農産物を代わりに輸入して日本は、農業に力を入れなくても良いと考えているようだ。
農業団体はなぜ反発しないのか不思議に思う。
電力会社で石炭を燃やした後の物を、農家が受け入れようとしているのではないか。
先進産業の、輸出企業の下支えをしているのではないか。
ひどい例では、農業人口は国民の一割に満たないから、自民党さんよ、農家を切り捨てる政策を取ったほうが利口ですよ、とアドバイスする先生もいた。有名な話だ。
良いですか、明治維新の時、人口の90%の農家が10%の士工商民を養ってきた。
今は生産性や輸入品が増えて逆転して、10%の農家で自給が出来る能力がある。
今一番の人気のコシヒカリは、茎が細く倒伏し易いのを倒伏低減材と称して、あの煙突から出てくるケイ酸石灰等の資材が使われたりしている。
干拓地の土壌改良剤も、官民、大学の先生が一丸となって、コンビナートの廃棄物を利用することを推進してきたのだから。
農家よ、貢献度をもっとアピールしよう。

(注)平成16年の調査では目下の農業者人口は約7%

フカとサメ(P20~P21)

フカ(鱶)とサメ(鮫)の違いをご存知であろうか? 地球上には400種類以上も存在する魚類である。
そのうち、映画ジョーズ等で出てくるイメージの人喰いザメは、10種類弱くらいとのことで、この呼び方の違いは語韻からして、大きいものをフカ、俊敏なものをサメと、区別するかとも想像できる。
しかし、実は全く同じ魚類を、呼び方を変えているだけである。農業の分野に於いても、同じことが言える。

行政や団体が、例えば私達の地域では、岐阜県クリーン農業と言って、真剣に食の安心、安全を推進している。大変良い事である。
だが、それらの努力は、生産農家にとっての利益とはなりにくい。
現状では管理の変化や、諸々の手間等が増える負担も多い。
その上、野菜や果物の流通、販売における畑の外側では、自分達以外の地域でも、みな同じような事をやっているからである。
クリーン農業とか有機栽培という言葉は、市場に上場できる単なる資格に過ぎず、優位、差別化とはなっていない。
入場券であって、特別席ではないのである。

いわゆる、言葉や呼び方が違うだけで、中身は同じ、即ちフカとサメの呼び方の違いに落着くのである。
現在の技術レベルでは、一般の安全、安心農業の施肥管理は大体の心ある生産者なら、実行できる水準である。
心ある生産者の努力が、反映される市場での評価を、如何にできるか。
消費者の安心感と満足感を高めるには、先ず食味、鮮度、価格等の、出来上がったものの結果で評価してみよう。
プロセスがよければ、結果も伴うはずである。
安全な上においしい、お値段もそれ相応と来るのが理想であるが。

生産者の興味、消費者の思惑(P22~P23)

何処でもされている事と思うが、我が社も経営分析と展開について指導してもらった事がある。
商品の息吹農法についても、市場アンケート調査をしてもらった。
スーパーの店頭における主婦は食味、鮮度、安全性を重視して購入している割合が多かった。
息吹農法の効用を、「おいしい・新鮮・安全」と発売以来のテーマにしてきたので、コンサルタントは感心してくれた。
しかし卸売市場での生産農家に対するアンケートでは、農産物の生産、販売上の興味は一に価格、二に規格重視であった。生産者と消費者の間に大きなギャップがあったのだ。
ただこれは、10年位前の話である。
その後埼玉県で、テレビ朝日でダイオキシン問題が放送されたときに、ついに安全問題が産地の死活を分ける時がきたと思った。
放送内容そのものは、農業問題に良くある事であるが、誤解を受け易いものであったと記憶している。
O—157カイワレ大根事件の時も、全く持って生産者側を悪者に仕立てて、経営を根幹から破壊してしまうような無責任な対応もあった。消費者は、ある意味では無知で、ある意味では正しい行動も取る。
時の流れや公には勝てない等と、あきらめる事もない。
貧富にいろいろ差があろうが、食文化を前提にすれば、栄養価やカロリーが満たされれば良いというものではない。
美味しく、楽しく、満足の行く食事が出来るのは、農家の仕事があってこそである。
若い生産者は売上を高める事ばかりに興味がいきやすいので、おのずと販売単価の高いものへと力を注ぐ。
実入りの良い農家は、出荷単価が下落相場にあっても、下値を支えてくれる技術と販売方法を取る。

いわゆる安定収入である。
高値狙いをするうちは、まだ元気があって、お若いともいえるが、趣味の農業の部類ですぞ。

作る人の楽しみ

上農・中農・下農(P24~25)

誰もが文句のつけようがない諺のようなものであるが、下農は草を作り、中農は稲を作り、上農は土を作るとか。
会社経営者は、下農は金を、中農は物を、上農は人を、それぞれ作る等と引用する。
宗教家は目に見えない土の中の植物の根を「心」、茎や葉を「行動」、花や実を、文字通り「結果」と教示される。誰でも良い結果を求めたいのだが、その手順や心配りに大切な事があるのだと解釈できる。
人、物、金と、心と環境のあり方は易しいようで難しい。
言われれば納得できるが、いざ実行となると雲をつかむような論議ともなる。
謎解きみたいかもしれないが、上農下農のその心は? というと、私は循環と継続と答えたい。
目先の利益や一回ぽっきりの満足では、自分が良くても周囲はついて来ない。
結果的にいつも振出からスタートしなければならないので、足元が固まらず進歩せずに、むしろ取り残されていくのである。
大勢の専業農家で、上農の部類に入る人には、共通事項が見られる。
まず第一に、グループ行動を取る。
皆で一緒に研究しようという考え方である。
第二に、いつまでも若い。
農業には定年がないから、元気の良いうちは現役でいられる。それも自分の体力に合わせてやれる。
また、情熱あふれるお便りを下さる方も多い。
身体が若い頃のように言う事をきかないが、未だやってみたい事があるといって、いろいろ質問が来たりする。
情報は、より大勢で共有し、仲間内で技術向上を図り、または助け合う、そのようなほほ笑ましくも張りきりグループが来訪されると、我が社の社員も更に力付けられたように感じると言う。
農業とは本当に良いものである。

農家が頭を下げる相手(P26~P27)

米の販売が自由になり始めたころの事。
まだ水田が近所に点在する精米工場で、仕入れ担当の役員さんが「農家の人っておもしろいね」といきなりおっしゃった。
直接お米を売りに来て、条件と相場だけを聞いてその後何も連絡をくれない、普通の取引にはアフターがあるのに、よかったのか条件が合わなかったのかもわからない、一方通行なのだと言うのだ。
そこで、生産農家の気持ちや考え方について思うことがある。農家の人々は話を伺うと面白い事が一杯聞けるのである。印象的には控えめで大人しい職業人にみえる。
人生論、農業技術論、市場相場、時事、ニュース等が話題となる。毎日、環境と生き物の間で生き抜いてきているから、人生の達人とも思え、尊敬できる人も多い。
時には、農業政策や共同出荷での苦労話等にも、話がはずんだりする。
そんな会話の中で、ああ農家の人は強いなあと思う。
何も恐ろしいものはないのである。頭を下げなければならない相手も少ない。
だが、世間では強くみえても、弱い立場の人が多い。
たとえば、営業マンを殺すには刃物は要らない、テリトリー(担当地域)を変えれば善し。
といって、成績優秀な営業マンでも、全く売れそうもないところを担当させられれば、お手上げである。
大企業でよくある手段、僻地左遷という手である。
しかし、強いと思われている農家でも、頭の上がらないのが天候である。
穂が登熟し始める頃、水田を見回り中に、大粒の雨が降ってきて、目の前で稲が倒伏していくことがある。
「アア・コケチャッター」と顔で笑っているが心では泣いている、何も手を出す事は出来ない。農業の宿命である。
でも浅漬けのフロンティア、愛知県の梅原漬物の梅原社長は、「甘えてはいけない、天候の変化によく対応し、それを乗り越えていく技術を確立してこそ農家だ」と、契約栽培を紹介してあげた生産者に、これまた辛口でそうおっしゃる。

ピッグ・サイクル(P28~P29)

ピッグとは豚のことである。
豚価の下落と、環境問題などの逆風で、生産者が減った。豚用の飼料や動物薬の販売商社も部門を縮小された。これは、豚肉の需要が減ったためではない。現に、安定価格を維持して養豚経営をしている人も多い。食肉用の豚価のしくみについては、我々には良くわからないことも多い。
そんな中で、生産者の陥りやすいのが、ピッグ・サイクルというものである。
即ち、豚肉の市場価格が上がってくると、それ、種付や、子豚導入、増産、とくる。
価格が下がると逆になる。でも、そんなに上手くはいかない。市場価格は、いつまでも生産者を待っていてはくれない。時間差があって、増産体制に入ると、価格が下落する。
この高値ねらいの安価つかみを称して、ピッグ・サイクルという。
農産物には相場はつき物である。それには、どういう対策をとったらよいか。
2つの代表的事例を述べてみよう。
1つは、下請け農業から脱皮して、自己ブランドを確立すること。豚肉は食肉センターで加工されるので、個人ブランドは困難にみえるが、まず、自分の豚肉が他より優れていることを知ることだ。常温でカットできる、炒めても油臭がない、シャブシャブでも、クドさがなく歯ごたえが良い。そして次に、販売ルートを調べて、近所の肉屋さんで、自分の生産した肉を買い、生産者であることや優れている点を店主に話す。そこで、親近感も増す。この方法で、「酵素飼育豚」と名づけて、一流ホテルに採用されたのが、佐賀県の久保信幸さんである。豚価が日本一になったと、電話報告をいただいたこともある。
もう1つは、価格を追うのをやめ、コンスタントに生産出荷すること。進取の気性に富む人は高値を狙って、新品種を追いかける。ところが、技術が手についた頃には、次の品種に人気が移っていることなどはザラだ。すなわち、あまりうまみはない。それも人生のうちと割り切るのも良い。しかし、相場は後からついてくるので、いつも続けて出荷しているうちに、高値のチャンスがきっと来る。
法蓮草やレタス、チンゲン菜等は、1年のうちにいつかは高値が来る。菊等の切花でも色によっては人気、相場がいつものように変動する。
追いかけるのではなく、チャンスを逃さない体制を維持するのが、コツのように思った。

下請け農業からの脱皮(P30~31)

仕事柄、日本列島あっちこっちに行くことができ、いろいろな人にも会えるし、物珍しいことに出会えたりもする。
初めの頃、北海道の生産者の方々に息吹農法の説明をしたりすると、まずは決まって軽蔑の眼差しを受けた。内地の小さな面積の農家を相手にしている様なメーカーに、北海道の大規模農家を指導できるか、というような雰囲気であった。
ある時、人参生産者グループとの勉強会がセットされ、お話させていただいた。
私の会社の近くの一町歩の経営面積と、十町歩以上は当たり前の北の生産者とどちらが正味所得がありますか? 質問してみたのだ。
そして、「皆様は、自分の所有する畑で自己意志、自己責任で一見自由に耕作しているように見えますネ。しかし、その作品である販売価格は誰が決めているのですか? 全くあなたまかせで、それが当然と思っておられるでしょう。それを下請け農家・下請け農業というのですよ」と話すと、同席していた北海道では有名な有機栽培指導者の小林さんが、「下請け農業か、うまい事を言うネ」と誉めて下さった。
逆に毎年一、二度お伺いするだけだが、最も古いお付き合いの農家さんのことだ。
庭先の別棟で、畑仕事の合間に毎日、自動車部品の加工の内職をされているのだが、好奇心の旺盛な小生、どんな部品でどこの自動車メーカーのものかと質問してみた。
どうも足廻りの重要な保安部品であるらしい、くらいしかわからない。私はもっと正確、
詳細にメーカー名、車種やアセンブリーの中身を聞かれてはどうかと言ってみた。
その後、製品の精度や納期はキチンと守ってきていた実績もあったので、加工賃を向こうから上げて下さったとのこと。賃上げ交渉はたった一言。「うわー、そんな重要部品だったのか」なのだ。
今までの加工賃は、作業者の加工に要する時間と、設備機械の償却をベースにコストが決められていたのを、部品の付加価値から逆算して支払って下さるようになったのである。
農家は生産現場で、収量や出荷、規格ばかりに気を取られ、消費者や流通業者の気持ちを読めないと楽しみが半減しますよ。
作れば売れるというのも良いけれど、台所、食卓での雰囲気まで想像しながら、畑仕事をするべきであろう。

農業は儲かるが農家は?(P32~P33)

農家が集まっておしゃべりを始めると話題が尽きない。
愛知県の西部で積極的な経営を進めているFFJの大島哲男社長は、いつお会いしてもおもしろい話をしてくださる。
彼は二代目で、M式の水耕栽培で生産をしながらも、スーパー等への農産物の流通を確立されている。
葉菜類が中心となっているようだ。
長い間の経験から表題のような話になった。
結論的には作るだけの農家でも、損はしないにしても、一般の企業のような利益は難しいという。
農家は何日も掛けて、場合によっては収穫まで何年も費やしたりしている。
しかし畑から自分の手を離れて市場へ出て行くと、一瞬のうちに商談が成立して大きな利益を得ているのを見ている。
「俺たちは人がよく、労力の割には儲けが少ない」と嘆く。
ほとんどの農家が、大なり小なり愚痴るのが当たり前だ。
だったらどうする? というのが大島社長の実行力である。
先ず、農産物の宿命として、工場生産物のように、全て同一規格のものが出来るわけではない。
相場にも大きく影響される。
したがって、販売ルートを多角化して、こだわり農産物ルートだけではなく、加工用の販売先をも確保している。
最近は、インターチェンジの通り道に二百坪ほどの店を構えて直売場も経営している。
品揃えも大変だが、曜日、天候によって売れ行きにバラツキがでる。
労力と知恵を同時に働かせなければならない。
その上売れ残れば、お金にはならない。
作って、JAの共撰場に出荷すれば、自動的に代金が振り込まれてくる、共同出荷システムほど楽なものはないのだが。

1円ケチって10倍の損(P34~P35)

農産物価格の下落傾向が、バブル経済崩壊後目立っている。
私はむしろ、適正価格に落着いてきたのではないかと冷静に見ている。
今まで、作れば売れるとしてきた生産農家にとっては、先行き不安である。
花卉鉢苗の生産農家は、特に影響が大きい。
設備投資の負担や暖房費の維持費も重い。
そこで、殆どの農家が売れないから、今まで使用していた資材を、節約と称して使わないという。
すると出荷される商品そのものが悪くなってくる。
例えばパンジーの苗1鉢の資材費が10円とする。
コストダウンと証して1円削る。削られた資材の効果もなくなる。
今まで市場では40円で売れたものが、品が悪いためもっと安くなってしまう。
1円削って10円どころではない差が出てくる。
ひどい場合には売れ残るのである。
私は、いろいろな経験から、質の右肩上がりの対策を伝授している。
先ず、使用している資材費の単価を検討するのは、何処でも誰でもやってきている事である。
それより、今仕入れしている種子や資材を1ランク以上高いものにしなさい、そして仕入れ単価は現在のままで購入できるように交渉しなさい、とアドバイスしている。
簡単な事ではない、ランクアップするには、仕入れ生産者の目利きが必要である。
更に経営というセンスが試されるはずだ。
例えば、パートを雇用して露地野菜を手広く経営している人は、種子の品質が良いものを購入し、2〜3粒ずつ播種するのを1粒に変えてみる。
すると間引きの手間、コストが減り、しかも品質の良さは生育、歩止りの向上となって所得にプラスとなる。
単なる値引き要求なら、買い手の権利として誰でも言える。

魔の金曜午後3時(P36~P37)

キリスト教徒は13日の金曜日を受難の日といっている。
農家にとっては、金曜午後3時に注意しなさいよと、アドバイスしてあげる。実際、直接に苦い体験をした幾人もの農家に聞いている。手口はこうである。当然換金性のある米が狙われ易い。先ずお米を販売して欲しいと、都会から産地の農家に電話が入る。
「評判を聞きまして、お宅のお米がおいしいので取扱いたい」と。
「他からも頼まれているし、それにお値段については」と、優越感と共に強気な主人。
相手 「いやいや判っております。少しイロをつけて上乗せします」
主人 「そうですか、じゃあ1俵このくらいで」
相手 「ああその価格なら評判の良いお宅のお米です。助かります」
主人 「お支払いは」
相手 「お振込み先を教えて下さい。すぐに振り込みますから」
とまぁこんな実況中継でやり取りがある。
そして100俵か10トン車一杯で160〜170俵分くらいの現金が、200〜300万円単位で振り込まれてくる。これが2回着実に続く。
顔も見てないが堅い人だし、前金だから安心して出荷できる。問題は3回目の電話。
相手 「すいません、評判が良いので予定より早く売り切れそうです。大至急出荷できませんか」
相当慌てている様子、また農家も俺流の稲作はやっぱりたいしたものだろうと、プライドがちらほら。
相手 「現金を振込みしたいのですが、銀行が閉まっており申し訳ございません、月曜日朝一番でお振込みしますが」
と言われたら、既によい取引先を得たと思い込み、次に、よし、ここは一番協力してやろうじゃないかとの男気が、主人の判断を狂わせる。
これが金曜日、魔の午後3時過ぎのやりとりである。
米を加工していた知人は、注意していたがこの手に引っかかり、月曜日に確認したら、会社は消えてしまっていたとの結末であった。
詐欺師の手に掛かったら、相手のほうが上手、そういう人種に付け入られることのないように。

跡継ぎのできる農家(P38~P39)

最近亡くなった叔父の法要の会席での話である。御住職が跡取りはいても、跡継ぎは少ないと説教をされた。それまでは、お経読みのヘタクソなお坊さんだと思っていたので、
心の中で申し訳なく思いながら、「御住職さん、面白いことをおっしゃいますネ」と言って、話をさらに引き出してみた。
一家の主人が他界したあとの財産分けでは、ほとんどの家庭でみっともない争いが起きるのだそうだ。
世代が子供に移っていく大きな節目で、財産の分捕りばかりして、親の有形無形の財産を引き継ぎ、守り、育てようということは美談の部類に入るとのこと。
財産の多い少ないに関係なく起きるので、どこでも法話に入れているとおっしゃった。
自分達のことを考えても他人事ではない。子孫のために一生懸命人生を送った後の始末だから、先立つ親は、あの世からでも耐えられないであろう。
その中で、跡継ぎを上手に育てている農家も結構多い。共通していえることは、第一に明るい家庭の雰囲気を感じさせる。第二に、何事にも感謝する姿勢が見られる。自分の職業に対してグチばかり言っている家は、絶対に跡継ぎは育たない。
どうして親が嫌がっている仕事を継がなけりゃならないんだ、となるからである。
まず農業はおもしろい、楽しい、ということを身をもって表現すること、苦しみや辛さは、どんな仕事や職業にも付きものであること。
一番大事なのは、自分が農業をしていて良い人生を送れていることを伝えることである。
そして、時代と共に農業の方向も内容も変化をしていくのであるから、これからは若い力で時代にあった農業経営をしていけば、という方向を示すことである。
跡継ぎのいる二世代農家を見ていて、本当に素晴らしいなあ、羨ましいなあと思うのである。

定年帰農(P40~P41)

農業後継者不足が社会問題となっているが、農業を後進国型産業と位置付けてしまうから、行政も後ろ向きに対応を取らざるを得ない。
以前、農業雑誌社の編集長と話し合ったときのことである。
「またまた井上節がでてきたね」と冷やかされたりするのであるが、若い後継者ばかりではなく、企業での勤めを終えた定年からでも、農業に転出されても良いのではないかと提案した。
それはそれで、その家だけではなく、国や地域に於いても充分戦力になるのではないか、
そういう対策をとり、そのような希望をもった定年族に、農業を勧めてみるのも良いのではないかということである。
現在は中山間地域ばかりではなく、何処にも放任やそれに近い農地がどんどん増えている。農地を新規に得る事も出来る。
技術は地域の農業改良普及所やJA、はたまた農業資材メーカーや、販売会社が手取り足取り指導できるシステムがある。
そして精神年齢は昔の暦年齢に掛ける80%の時代である。今20歳昔の15歳、今の厄年昔の33歳、今の還暦60歳は昔の48歳、したがって今の75歳は昔の60歳と同じである。暦年齢によって暗示にかかり、老け込まない事である。
だから、新規に就農を受け入れるには、若年層ばかりではなく、第二の人生を計画する人も割りと容易である。
注意する事は、家族に喜んでもらえる方法をとること。
新規就農の成功の第一のカギは、家族の協力である。同居する家族を、少しずつ畑に引きずり込む事である。言葉は悪いが、農家は手が多いほど楽である。
常時必要なくても、チョットだけでも良い。
次に、せっかく第二の人生を歩むわけだから、第一の人生で経験して得たものを、必ず農業に活用することである。
営業畑の方は販売力ある生産、経理畑の方はコンピューター等に、毎日記録する。成功者が一杯いますよ。
ちなみに、冒頭でお会いした編集長の斉藤さんは「定年帰農」という農業雑誌を発刊され、専門誌なのに予想外の人気でよく売れていると、後日お聞きした。

食べる人の喜び

宇宙飛行士の食事(P42~P43)

上下逆にしても1961と読める年だったと思う。最初に有人宇宙飛行に成功したソ連のユーリーチトフ・ガガーリン少佐両夫妻が訪日した。私は岐阜駅へ汽車が停車するわずかな時間を知って、握手をしに行ったものだ。
東西冷戦時代のことで、ニューフロンティア政策をとったJ・F・ケネディが登場し、益々米国とソ連の冷戦競争が厳しくなっていった頃だ。
先を越された訳だが、アメリカでは「ソ連はただ成功するためのものであった。内容はたいしたことはない」と報道されていた。その理由の一つに、ソ連の宇宙食は我々の人工食と違って生に近いものであり、技術の裾野が狭いから、そこまで手が回らなかったというものである。
最先端の限られた宇宙空間で、機能的による生理学から栄養学、そして、排泄物のリサイクル処理まで、至る所にハイテクが駆使されているのは、想像にかたくない。
宇宙でいわゆるチューブ食ではなく生食を召飯できるのは、何と贅沢ではなかろうか。
一方、昔、三井のご令嬢が、庭の手入れをしている職人がお弁当を食べているのを見て、うらやましがったと言う話を聞いたことがある。
ご令嬢いわく「お前たちはいいネ、おいしく食事ができて、私は毎日がご馳走攻めだから、何もおいしくないの」と言ったそうだ。
私は食文化というものは、人間に許された特権だと思う。
おいしいものをいただき、楽しい団欒や、健康に過ごすことこそが大切ではないか。
読者の皆様にも企業戦士のご主人には、家では息吹の里イモの煮っころがし等が、かえって喜ばれるかもしれない。繊維が細かく、ネバリがあって甘さも程よく、しかも10分間位で炊き上がる里芋。
こんなものが、ふんだんに出回るようになると良いのだが。

米飯給食の味(P44~P45)

日本人のお米の需要は年々減少してきている。

パン食や副食が増えたのも原因であるし、肉体労働者の割合が減ったのも付け加えられる。
そこで、学校給食に米を炊飯して、子供達に少しでも多く食べさせようとするメニューもある。
そのときのお米の品質を問題にしたい。
ぜひとも地元の一番美味しい品種・等級のお米を食べさせてあげていただきたい。
大多数の納入業者は目先の利に走って、価格重視で納入するであろう。子供達に米飯食の良さをPRする機会を潰してしまっているとも思わずに。
私の子供が中学生のときのことだ。米飯給食のとき、クラスで二人がまずくて食べられいと感想を述べた。それぞれ言い合っているうちに、「プロはどう評価しているか」ということで、個人経営の中華料理屋さんの息子さんに決めてもらうことにしたそうだ。
すると「家のライスよりうまい」と言ったので、一件落着したとのことだ。
まずいと言ったのは、物心ついた頃から息吹米を食べているせがれと、農家の次男さん二人だけだったと話してくれた。
私は「それは正解だよ」と言い、よく説明してやった。ラーメン店のお米はイタメ用で、油を吸収してもベトつかない等級を採用している、場合によっては、いわゆる外米が混合されている。だから、ラーメン屋の息子さんは本当のことを言ったし、二人の子供も普段よりまずいと言ったのも正しいといえるのである。
そこでもう一つ、岐阜市近郊の鬼頭米穀店の話をしてみよう。
農機具販売会社のご紹介で息吹米を知ったご主人の、おもしろい知恵である。
地元の幼稚園の親子給食会に特別に息吹米を提供し、先生からもお米屋さんのPRをしていただいたところ、いっぺんに注文が増えたとのことだ。
損して得を取れではないが、おいしいものには誰も目がないのだ。

神話 曲がったキュウリ(P46~P47)

生協の消費者運動の幹部をされていた、沢田富之助さんの生前のお話である。
ある時、愛知県の渥美地区の農協さんに呼ばれて、キュウリのハウスへ案内されたそうだ。
農協さんが「先生、キュウリは農薬でまっすぐにしているのではないんですよ」との事。
沢田さんも笑いながら、消費者運動の一つとして安全な農産物をアピールするために、曲がったキュウリの話を作ったのだとおっしゃっていた。
その結果、曲がったキュウリが正常で、それを見映えを良くするために、農薬の力を借りてまっすぐにしている、というのが常識になってしまった。未だにB品の曲がったキュウリをA品より高く売っている店もある。
実際、吊り上げ、吊り下げ透引して空中で成長させるキュウリは、ネットや枝に邪魔されたりしなければ、ストレートに育つのである。
でもチョット待って下さい。消費者ばかりをせめられませんよ。生産者も技術指導者も曲がりキュウリの原因をこれまた間違えているのだから。
キュウリの曲がりは、生理のアンバランスであることは容易に想像できる。
それでプロは普通三要素の一つカリウム(K)のアンバランスとして対策を取ってきた。
カリウム不足を補うために、他の肥料との兼ね合いも気を使わねばならない。
ところが、その本質は根の活力と潅水のムラが直接の原因であったという訳である。潅水の方法は結構判断力が要りますよ。
ここでも現象と原因、そしてその本質との差を取り違えてきたことが、農業技術の問題点と気付かれるでしょう。
なお、良いキュウリは少々規格より太くても、中心部の果肉はカスカスにならず、香りも強く出てくるものである。
したがって、日持ちと色ツヤに強く優劣が出てくる。カリカリとした歯ごたえ、果肉部の断面の色でも違いを知ることができるのだ。

料理長の眼力(P48~P49)

烏骨鶏を中心とした、薬膳料理を普及するために、開催していた研究会での事である。
主催者の知人は、顔が広く、地元の名士は勿論、学者や役人や食材関係者も交えての事。
みなそれなりにお口も肥えている人ばかりと思える。
一品一品、説明付きで味わっていきながら、参加者が点数を付けていくのである。
口々に、美味しいと言いながらも、ちょっぴり評論家気分を味わいながら、普通では食べられないような種類の懐石風の料理が提供されてくる。
そして後日、そのときの各人の点数表を統計した一覧表が、開催のお礼と共に送られてくる。私流の分析をしてみて面白い事に気付いたのである。
先ず全体的な評価については、自分でも納得がいくものであった。
一般に、全てに甘い点数をつけているのが、四十代、五十代の女性であった。
年齢、性別、職業別の総合評価をみてのことである。
この年代の女性の気性や行動力の源が、読めるような気もしたのである。
おもしろかったのが料理長グループで、地元のホテルや、旅館の料理長さんたちの評価である。
一番辛い点数がついていたのが、実は接客マナーの項目であった。
一番甘い点数は、最後の食後のデザートである果物。
通常は時期によって、メロンやスイカ、苺やブドウ等が出される。
調理技術と関係ないところの評価であった。
私は素材に一番興味があるわけだから、少し意外に思ったが、チョット考えると最もだなあと思った。
おいしい料理を頂いての最後のデザートが、キュウリのような味や、カボチャのように硬いメロンが出されると、大変がっかりしてしまうであろう。

誰もコメを食べていない(P50~P51)

昔は、米飯食は脚気になりやすいので、少し麦を混合させると良い、という時代があった。
今は、ダイエットにはもってこいの食事だといわれるようになった。これは低カロリーメニューであることや、消化しやすい等という面ばかりではない。
お米とパン食の違いは、くどい脂っこいものを伴わせる割合が減るからである。副食の違いも大きい。
その上、脂っこいものを食べると、舌の上に薄い膜が出来るので、舌の感覚が鈍くなるらしい。だから味も薄味より、濃い味付けとなりやすい。
最近では、油分も舌で味として反応している、と言われるようになったが、調味料や薄めの料理とは相性が良くない。その結果、肥満食になりやすい。
ところで、古い話になるが、九州で終末治療に食事療法を取り入れている院長先生から直接お聞きした話である。
もう古くから手の施しようのない病人を入院させて、食事療法を中心にして奇跡的に良性へとなるケースがある、とのこと。そのときの食材は、無農薬農産物が中心で、お米は玄米食であった。
その先生がシャーレで、玄米のまま発芽実験をされて、今まで使用している玄米と、たまたま私どもの玄米を比較されたのを見せていただいた。
一般の玄米は、発芽にばらつきがあったのに、私どもの玄米は、揃って同じような丈で茎が伸びていたのだ。
先生には、生命力の違いを誉めていただいた。そして、精米して胚芽のないお米は、卵の黄味がないのと同じで、コ(粉)  メ(芽)の芽がないところを食べているのだとおっしゃる。
粉を食べているに過ぎないのだと。
最近では発芽玄米も定着してきている。
息吹農法のお米は、普通精米しても、調湿胚芽精米しなくても、胚芽付着率が高い。
生命力を食べなければ。

レタス:硝酸濃度が低減

(平成14 年9 月23 日 長野県 極早生シスコ)

硝酸濃度が低減 左:対照区 右:息吹処理区

左:対照区 右:息吹処理区

3回検査後の平均値

(3回検査後の平均値)
(根張りが良いので、吸肥力も消化力も強くなる)

トルコキキョウ:根張り良く生育差大きい

(平成14年9月 岐阜県)

右 息吹施用区

右 息吹施用区

対照区 息吹施用区

対照区 息吹施用区

目次に戻る

第二章 黄金律と息吹農法

黄金律(おうごんりつ)

黄金律とは(P54)

黄金律とは文字通り、絶対的なルールや法則という意味である。
デザインの世界では、当たり前のようになっている。植物の世界でも形があり、再現される世界であるから、その姿や形に一定の法則があるはずだと思っていた。
これに確信を得たのは、友人に連れられて滋賀県の観音正寺に安置される予定の、世界一の白檀の千手観音像を見に行った時である。
京都嵐山の仏師の工房で、製作途中の説明を聞いていて、これだと思った。古今東西、世界中の観音像の寸法デザインは、統一のルールのもとに製作されているのである。いろいろな説明があったが、一つは、横一杯に広げた掌の親指の先から、小指の先までの長さが、顔のあごから額の髪の生え際までの長さと同じということであった。生え際が後退している場合はともかくも、顔の長い人は手も大きく、手の大きい人は顔も長いということになる。
どこの誰がそういうことを考えたのか、不思議な世界である。

黄金律の発見(P55~P56)

私は農業技術者でもないし、会社を設立する少し前までは、全く農業のことは知らなかった。
消臭剤の開発をしている途中で、いろいろな先生や、当時言われ始めていた「バイオテクノロジー」なるものに興味をもったくらいで、いまだに作物の作り方は知らない。
会社を立ち上げる時に、いろいろな先生からアドバイスをいただいたのも影響している。
一つは、素人に徹しなさい、二つ目は、植物を良く観察しなさい、であった。
息吹農法は別項にも記述してあるように、施肥設計を変えずして効果が上乗せされるので、あれこれ栽培の指導をする必要の無い資材である。
形状は粉末であるが、畑の土壌改良用の道具みたいなもので、散布量と散布時期さえ間違わなければ、誰でも効果は出てくる。
ところが、一般の対処療法的資材のように、使用目的と効果の関係がハッキリしているものと違って、全般的に効果が出てくる。ヘタをすると、何となくで終わってしまう。

黄金律を知っている人(P56~P57)

息吹の愛好家は素直な人ならベタ誉めして下さる。私は「いくら誉めて下さっても、お値段は変わりませんよ、息吹の中身は皆同じですよ、お客様がキチンと栽培して下さったからですよ」と言って喜びを分かち合う。
但し、こちらが素人だから、プロである生産者に、「息吹でしかできない点はどこか?」と尋ねて、他の中途半端なやり方との大きな違いを教えていただく。畑でこのような質問をさせていただいた生産者は、一流の部類に入っている。
すると茎が太くても、メガネが出ないトマトとか、灌水すればする程徒長せず、玉ばかり大きくなるとか、おもしろい観察力のノウハウが聞かれる。ある時、雑誌社の編集者とそのようなことで話し合った。そして「大根の芯にスがあるか否かは、外側の茎の付け根の土堤の部分の大きさで、大体わかる」と言ったら、「それ本当ですか」と言うことになり、他の先生にも聞かれて確かめられた。そういうこともあるとの結論、形ある生き物であるから、外観と中身の因果関係について一定の法則があるのだ。
こちらはアマチュアだから、プロのしぐさを見落とさずにマスターしていく。
全国チェーン店の焼肉屋さかいさんでは、キムチ用の白菜を季節的に息吹農法のものを採用していただいた。シーズンにお店に伺って食事をすると、同行する当社のお客様にはよい宣伝となる。
彼らは、白菜の頂部をつまんでかじる。それで味の全てがわかると言う。砂糖をまぶしたような甘い味だ。その上、漬かりが早く、出る水が少ないので、製品歩止りが10%以上も良いと言われる。
仕入れ担当者よりも、製造の工場長さんが喜んでいた。

なぜ黄金律か(P58)

農業資材はあちこち出回っているし、先生や指導者の人数だけ栽培方法があるといっても過言ではない。植物を評価するための絶対的な基準があっても良いのではないか。
逆からいえば息吹農法の目指すところは生命現象の健全化であるから、常に考えてきたことである。部分部分では、説明会や仲間内では話をしてきたつもりであったが、今回、文章にして発表することにした。
いろいろな先生や取引先の指導者の方々にも教えていただいた。
関係者には何も標準品を作らなければいけないと言っているのではない。基本を知ることによって、回り道をしたり、小手先の効き目の良い資材に振り回されたり、立派な先生と言われる後には、高価なシステム資材の使用が隠れていたりすることから、自由になって欲しいのである。真のプロになって欲しいのである。
資材の効き目はあったが、結果何も得ることがなかったとグチを言わないように、済ましたいものだ。

黄金律の実際

黄金律・根(P59~P60)

植物の黄金律は全て、根っこの状態が決め手となってくる。
農家は根張りが大切だといつも誰もが言うが、それでは根張りが良いとはどういうことですか? と質問してみると、返答に困る。
現在、根張りの良さは見た目で判るのであるが、学問的には、一株当たりの乾燥した根部の重量の多少で判定されている。乾物重量比である。今の技術では発根を促す資材はいくらでもある。だから生産者は迷ってしまう。
息吹農法を推進してきて気が付くことは、①根の表面積比 ②根の分布 ③根の白さが持続を三大ポイントとする。
まず、いくら発根が良いといっても、細かい根が多くなくては意味がない。要するに多細根型の根張りをすること。二番目の根の分布についても古い本に出ていた。
一般に横根、立ち根と言っているものの分布が適切であること。
私は横根を男性型、直根を女性型と説明する。横根は地上部の伸長と比例するし、直根はヘソクリ型の貯蔵的な役割をしている。
先生方は、横根は大地に抵抗をされているので、屈地性の根。対して、地下部へ深く張る根を、非屈地性の根といって区別している。どこでも女性が強いということだろうか。
もう一つ、根は白くなければ、活力のある発根をしているとはいえない。
このようなバランスの揃った理想的な発根は、息吹農法でないと無理とまで言える。

黄金律・茎(P60~P61)

根の条件が理解され、実際に栽培してみると、後は楽しみ一杯となる。
まず、多細根型の作物の茎は、養分を吸収する導管の一つずつの太さと数が比例する。
だから、茎が太くても、チッ素肥料の効き過ぎと錯覚しないこと。
葉色を比較して見てみる。茎のしなやかさを確かめてみると、違いが判る。
黄金律による発根は、ミネラル吸収と消化も良いので、残留体内チッ素分も減少し、徒長しにくい。
稲では下位節間が詰まり、倒伏に強い稲株となる。茎のしなやかさは、物理的にも説明できる。

勘のいい生産者は、果樹園でも徒長枝の剪定時に、ハサミの感覚が違ってくるので、納得される。切りやすいのに腰があるのだ。

黄金律・花(P61)

花や実は、毛細根の数と色によって決まる。
農家の人は、たくさん実をつけて、収量を高めたいだろう。
それではどうしたら良いでしょうか? と質問すると、誰も答えられない。
施肥技術ばかり追いかけ、基本が見られない。一株一本の花もあるが、花数は根の毛細根の数に比例するのである。
根張りを良くするということは、御利益があるのである。

黄金律・果実(P61~P62)

そして、果実の肉質も黄金律が待っている。
肉質の緊密さは、根の毛細根と導管のきめ細かさに比例するのである。
細胞密度の良い作物は、日持ちも良いし、第一重量感がある。
キュウリに息吹を施用される場合、本数出荷の場合は、規定よりも重量が増えるが、重量出荷の場合は本数が減ることを明言する。
大根等は一箱当たり何本とかいうケース出荷なので、重量は大幅に増えるのが普通、そうでない時は栽培マニュアルを再検討して下さい。

黄金律・色彩(P62~P63)

花や実の色も、黄金律に支配されている。根の白さと着色の良さは比例する。
着色の向上は、果実ではストレートに商品価値として出てくる。
梨を作っている人で、会社設立以来ご使用いただいている例では、品評会では問題外の色としてはずされる。
幸水や豊水の色が濃い黄味を帯びている。
桃も黄色が強くなってくる。
チッ素肥料で肥大化させた玉との先入観が出てくる。しかし、糖度は一度は向上し、大玉で中心まで甘さが安定している。
直売場の行列が一番多いのを見れば、お客様の方がおいしさをよく知っていると安心している。

黄金律・実(P63)

根からの条件ばかりでなく、花の形と大きさ、オシベ、メシベの状態も黄金律に支配される。葉柄の大きさは、大玉と因果関係がある。
そして、メシベの健全で大きいものは大玉になりやすい。オシベの形状を揃えることが、秀品率を高めることになる。
キウイフルーツの名人に、畑で受粉の方法について話をしていただいた時に、扁平果という丸みがなく、少し平らなものは、受粉時にオシベを傷つけると出る、ということに気付かれていた。
いろいろなメーカーのカタログを見ると、オシベ・メシベの状態を知らずに効能を述べた写真が載っている。そこまで気付いていないメーカーが多いので、わが社のビジネスも当分安泰であろう。

黄金律・付記(P64)

黄金律については、統計的なデータは取っていない。いろいろな文献や生産者の経験と小生の観察力の成果である。
これに賛同する大学院生の人達には、博士論文のテーマとして、ぜひ取組んでいただきたい。
今までにこのような考え方で、農業を指導してきた先生は、相似象学を提唱した哲学者、楢崎皐月氏くらいのものではなかったか。先生は、古神統の自然崇拝の思想を、生物の世界に持ち込まれた天才的な人と言われている。相似象の一つに、植物の根の毛細根と動物の腸の繊毛の形状配列が相似型であると述べてあった。
息吹農法の開発のキッカケも、植物と動物の呼吸作用のメカニズムの相似を応用したので、すぐ納得できた。

黄金律(P65)

黄金律(根との連動)

息吹農法

第三世代の資材(P66~P69)

農業の世界は当惑する事が多い。
畜産農家等は理屈っぽいところがあるが、畑作農家は手法に興味を置いている。
要するに、畜産農家は家畜の生理を勉強して飼料や薬の施用を考えるが、畑作農家はどのような時に、何をどれだけの量、どのように使うかという思考をめぐらすのである。
生理的な原理を考えるのと、現象対策で栽培するのとの違いを感じる。
この違いが農家をして「我々はだまされた」と言って資材屋さんを悪者にする。
何故そんな風潮になったのか、明確に答えを出すことが出来るようになった。
使用する資材に対する理解の仕方が違っているのである。同じ成分でも粉末、固形、水溶液や緩効性、速効性等とあるので、それに振り回されてしまっている。
それで次に選択に便利なように、資材の性質をわかりやすいように分類してみた。

第一世代の資材

栽培には必須・必要な資材で古来からあるもの。
例えば、肥料や栄養剤、微生物資材や土壌培土等である。この世代の特徴は、形状や荷姿が変わろうとも、または、他の資材との複合材料であろうとも、昔から存在したもの、もしくは、その延長である。
この資材は使い方を工夫する必要があるので、百人の先生がいれば百通りの使用法が生まれる。生産者は、ソレこの先生、イヤあの先生と、右往左往する。

第二世代の資材

作物の効能や生産性を高めるための資材。
農薬が代表例であるが鉱物や植物、動物等の抽出液、酵素やホルモン剤、酸素剤等の補助的資材等である。
これは使う目的をハッキリとさせることである。対処療法的資材であるから、効果もハッキリとしている。
勿論、第一世代と第二世代の複合資材も存在する。
世の中には頭の良い人が大勢いるので、そのような資材も多いが、能書きよりも、この分類から資材の効用、使用を検討すれば「お高い方が効き目が良いように思う」と言っている、化粧品を買う奥様方を皮肉る必要もない。

第三世代の資材

第一、第二世代に属さなくて、従来は自然環境のうちと思われていた、空気・光・温度・音・水等の機能をコントロールして、農業生産に貢献する資材を言う。
この資材は、通常我々のように全くの異業種からの発想が始まりなので、信用されないか、物笑いのタネとなる。

しかし、この特長は誰が使用しても、規定の使用法で効果が発現される事である。
第一世代にあぐらをかいている先生方にとっては、目の敵のように思われる事もある。
PTAの会長をしていた稲作農家のKさんが、肥料は使い方が問題なので、どこの何を使っているかを教えてもよいが、息吹は誰でも効果が出るので、企業秘密にしている、と冗談を言っていたくらいである。
音はベートーベンやバッハか、光は紫外線遮光フィルム、温度は遠赤外線によるヒーター、空気はマイナスイオンによる生育促進等、もうすでにハイテクではなくなっているくらいである。
息吹は水をコントロールする第三世代の資材として位置付けられる。

 (P69)
土壌改良材の役割は、いわば畑の潤滑剤といえます…!

 

息吹農法とは(P70~P71)

息吹農法とは、汎陽科学株式会社が発売している土壌改良剤を使用して、常識的な栽培管理で収穫された農産物の商標である。
天然物に近い生命力を持ち、おいしい・新鮮・安全な農産物を効率よく生産したもので、水稲、野菜、果物や卵等に至るまでの農産物の総称である。
天然物に近いとは、具体的に山芋のように粘りのあるものが判りやすいと思う。
息吹農法の長イモは、通常では見られないような粘りがある。
秀品率、歩止まりもよく、生産性も向上している。
ある時、名古屋の北青果の堀田社長と一緒に、梨畑に案内された時の事だ。
有利販売を期待してのことである。
堀田社長いわく、「君達欲が深いね。息吹でこんなに大玉になるのに、まだそれ以上の高値で買って欲しいとは」、といって大笑い。
幸水、豊水は500グラムと600グラムでは、目方の違いでは20%の差でも、一個あたりの単価は50%くらい違ってくる。
良いものを効率よく生産する事が大事である。
有機栽培だから収量が少ない、というのはまだ栽培方法や施用資材の選定に問題があると思える。
また、よく誤解されるのだが、農法と付いているから、あれこれ管理方法や資材をいっぱい使いこなすテクニックだと思う人が多い。
全く違っており、前述したように、減農薬栽培だとか有機栽培だとか言う栽培の方法論ではない。
私には、静かにブランド農業の時代が迫ってくる足音が聞こえてきている。
カゴメさんの生食用トマトは代表例である。
海外の輸入農産物はバナナのようにデルモンテ社やチキータ社の商標ブランドとなっている。
一般企業が農業へ参入してくると、香料剤メーカーのハーヴや、自動車メーカーのバラ、製薬会社の薬膳サラダ等のメーカーブランドが幅を利かしてくるのが予想される。
生産者は規格ばかりに気を取られないで、食べ物の美味しさ、栄養価にも十分注意して競争力のある生産物を出荷していただきたい。期待しています。

息吹農法の原料と原理(P72~P73)

息吹LDの本体は、北海道の石狩平野に広く分布する天然のピートモス(泥炭)である。いわゆる燃える土というものである。
地球上の寒冷地では、夏の間に植物が芽を出し、冬になると地上部は枯れる。地下部は冬の寒さによっても枯れることなく、永年にわたって堆積してくる。
保水性があるので、土壌改良剤として培土に混合したり、果物畑に施用されたりする。
そのピートモスを特殊な物理的方法で、触媒活性を付与して、安全ではあるが画期的な効果を発現する資材として特許を取得した。
微弱な電子の穴をあけて、半導体のように電子を保持しようとする力を持たせている。
しかし、その保持する力が弱いので、すぐに離れてしまう。
この取ったり離れたりする事が、水のなかで瞬時に繰りかえし反応している。
その結果、水がサラサラとなる。
データ的には通常水の粘度は一であるが、最大五分の一にまで下がり、長時間持続する。
もともと液体の粘度は、水を基準として計られている。
コップの中に息吹を入れて少しかき混ぜてみると、息吹農法のピートモスは水には溶けないのに、水がサラサラとしている感触となる。
私は外資系の接着剤メーカーに勤めていた事があるので、水の粘度の違いと、水が畑の中で土壌粒子同士の接着剤の役割をしていることが、すぐに理解できた。
特許は出さない方が良いと先生には言われたが、いつか自分が作れなくなった時のために、最少の特許だけは必要だと思い、二件ほど取得した。
ついでに、息吹を種子にコーティングして施用する方法も特許がおりた。
大豆やトウモロコシ、麦や稲等にコーティングして、世界中の畑に空から土改剤が使用できる。使用量は反当り300グラムを播種用の種子にコーティングするだけという便利なものである。実におもしろいではないか。

雨降って地固まる(P74~P75)

諺ではいろいろな問題が起きた後、かえって状態が良くなる事を言うが、畑ではそうは問屋がおろさないというところである。
究極の篤農技術は潅水や散水、水田の間断落水等の水管理にあると思う。
肥料の施用や株の仕立て方は、ある程度マニュアルに従ってマスターできる面が強い。
しかし水はそうはいかない。
いつどれだけ散水するのか、潅水量が同じでも、時間や天候、環境条件と作物の状態、また、株元か通路か、いつも一定とは行かない。
そして乾燥気味になると、病気が出たり生育が遅れたりする。
質の悪い事には、水をやり過ぎるとだんだんと土は締まってくる。
締まれば根っこが酸素欠乏を起こして、褐変したり根腐れを起こしたりする。
息吹農法は、全く逆で、常識では考えられない事が起きている。
先ず水をたっぷりと施すと、更に土が潤軟に成るのである。
ハウスを休ませる時は、有機資材を少しスキ込んで、息吹を反当り1キログラム表面散布する。その後タップリ散水をする、大雨が降ったくらいの量が良い。
そして通常の土壌水分率に戻して、作物の植付け条件が整ったところで、播種、定植ををする。
その時点で土が生き返っている事が体験できる。
水こそ畑の第一の耕作者なのである。
水によって土壌条件がコントロールされる。
微生物資材等の出番はその次である。
畜糞堆肥を作るメーカーでの試験でも、息吹LDをもとの堆肥10立方メートルに対して一キログラム混合するだけで、堆肥の初期温度と完熟度が上がり、その上臭いまで抑えられる。
堆肥の醗酵温度が違うから、色まで違ってくる。
土壌毛管法という農村集落廃水処理プラントにも採用されている。
被覆土壌にも息吹を混合したソイルブロックが指定されている。
瀑気槽の表面を土壌で覆い、しかも目詰まりしないような土壌を維持する、おもしろい方法である。

何故なくならない連作障害(P76~P77)

連作障害の原因は言い尽くされており対策もとられている。
それでも、なぜ減ったりなくなったりしないのか。
それは土壌の有害微生物や、ウィルス等が地上にいる限り無理との返答になる。
私が土壌改良剤を始めたのも、連作障害についてどうなっているかというところからスタートしてみた。
やっぱりであった。現象と原因の取り違え、それに連作障害の本質が捉えられていなかったのである。 
先ず、植物にとって連作障害は人間の都合から起きる事である。早い話がマツタケは、一度シロができると20年は出来ないとされる。
新しい環境を求めてテリトリーを変えていくほうがマツタケにとって自然なのである。
そして畑では連作障害の三大原因を指摘したい。
①種疲れ ②気疲れ ③土疲れ である。
先ず、種子や苗が原種ではないため、改良品種の固定期間が短い。従って環境変化に弱く、それとともに品種自体が劣化してくる。メリクロン苗等で、増産されたものは余計に弱くなる。
次に、生産者の手の掛けすぎ。これを人前で説明すると、会場の皆さんは思わず苦笑される。じっと我慢など難しい。
土疲れとは土壌の偏圧といって土壌に粗密ができる。土木用語ではクリープ現象という。
植木鉢の中でもおきている。
これが息吹を施用する事によって、一作目から改善されていくのだからおもしろい。
微生物を使って連作障害解消という方法もあるが手品の部類が多い。
理由の第一に、微生物を土壌中では生産者だと思っている人が多いが、実は養分を消費する側なのである。有機物に担持された微生物資材を投入したら、肥料が切れてばかりという思いをした人も多い。また微生物資材を鋤き込むのも耕運による効果の方が大きい。
息吹を施用した土壌は、棒を立てるとサクサクとした感じとなり、孔隙(スキ間)も1〜2%増える。これによって、土壌全体に新鮮な水が行き渡り、停滞している死に水部分がなくなる。
空気をタップリ含んだ水が活き水である。

息吹の使い方とポイント(P78~P83)

息吹の施用法は至って簡単である。第三世代の資材としての特長である。
通常は三つの段階で使われる、どんな作物でもこのパターンであれば、息吹の施用法は同じである。
施肥設計を特別に変えなくても、効果が発現される、尤も、息吹の特長を引き出すためには、いろいろ工夫するのも良い。
施用時期は、播種、定植前を原則とする。

◎水稲

育苗箱の培土に、息吹LDを土に300グラム、本田施用不要

◎露地、ハウス栽培

下表の基本通りでよい。

基本  
播種 1リットルに息吹LDを1グラム混合
育苗 10アール分の鉢土に息吹LDを300グラム施用
本圃 10アール当り息吹LDを1キログラム表面散布

◎菌床類◎果樹類等

永年作物は、収穫後から芽吹き前までに年に一〜二回
その他にもユニークな使い方がある。

菌床10立方メートルに息吹LDを1キログラム混合
混合量が少ないので、混合材の中で少しずつ増やしていく。

◎水耕栽培

水耕用の貯水タンクの中に、細かいネットやパンストに入れて吊り下げる。(口絵三頁参照)
目安としては貯水タンク10立方メートル当たり3キログラム

◎壁土

10立方メートル当たり息吹LDを1〜3キログラム
いわゆる呼吸をする壁土となる。 
部屋の空気がスッキリした感じとなる。

◎マツタケ

収穫時に割り箸等で目印をしておく。
なるべく早めに息吹LDを一グラムと、マツタケ山の山土10グラムくらいの割合で混合して、マツタケの穫れた辺りに、1平方メートルの割合で散布。二年後にマツタケの代が倍の大きさになる。毎年散布する。

◎道路法面

高速道路や林道工事等の道路の法面資材としては、文句のつけようのないよい土改剤である。
10アール当り息吹LD1キログラムの割合で被覆用の土壌に混合して施用。 
土の粘りと植物の生育バランス、植生の種類に関係なく効果がみられる。

◎池や湖の底泥改善

水のよどんだところ程よい。
水位が下がった季節やヘドロ状に堆積しているようなところへ、10アール当り息吹LD1キログラムを30〜50キログラムくらいに少し湿った土で増量して表面散布する。
すると、底泥の中に空気をタップリ含んだ表面の水が浸透し始め、底質が自然に改善される。効果が見られるのには一ヶ月以上必要である。大きな養殖池や干拓地の底質改善には画期的な方法である。

◎ゴルフ場、運動場

ゴルフ場の芝や水はけの悪い運動場で施用する。
芝には年1〜2回、目土と混合して表面散布。
野球場やサッカー場には、水のたまりやすいところに1平方メートル当り1〜2グラム、をグランドの土と少し混合して散布しておく。
ラグビー場では東芝の府中工場、慶応大学の練習場にも散布された。翌年両者とも日本一になったという縁起の良い資材である。

◎枕

息吹を袋ごと破れないように、布の袋に入れて枕作りに使用する。Oリングテストをすると身体に良い影響をしているのがわかる。よく眠れる。年配の人は運転時の腰の辺りにセットして使用する。不思議な事がある。

◎松枯れ対策

農家の庭先の立派な松が枯れてしまう事がある。ご自宅へお伺いする時はなるべく注意をしているつもりだ。
そして、少し葉が薄く黄色っぽくなっている枝を見つけると要注意だ。枝下面積1平方メートル当り1〜2グラムの息吹を表面に散布する。
年2回行う。
3年間は油断しない事。庭の状態等によってはコテを土に少し差し込み、チョット横に倒して、隙間を作りながら土中に散布するのも良い。20〜30センチメートル間隔に一回の割合で充分である。
これまでは、松枯れの主原因が、松のマダラカミキリが媒介する、マツノザイセン虫が犯人とされていた。
原因と現象、本質の取り違えがここでも起きている。カミキリムシを殺虫するのに、200億円以上の公的資金が投入されたと聞く。ついでに昆虫にも被害が及ぶので今はされていない。
原因は根の張りが弱くなったところに、センチュウが来たりするからである。 
根張りを良くしてやると、カミキリ虫に侵入されても松ヤニが出てきて防止する作用が発揮される。
この手で立派な庭の松が再生している。
言ったのを忘れていて後で感謝される事も多い。
公園や松林等には、単純で確実な方法といえる。

(P82)

特殊肥料の生産にも息吹が効果を発揮(例)特殊肥料の生産にも息吹が効果を発揮(例)

(P83)

イチゴ (平成16 年1 月21 日 岐阜市)

イチゴ
(平成16 年1 月21 日 岐阜市)

右側 息吹区 商品価値が決まります!!

右側 息吹区 商品価値が決まります!!

品種「濃姫」
定植時に、LD ミネラルを畝表面散布

  • 大玉で甘いイチゴを生産したいのだが、果肉が柔らかいため、日持ちの良さと両立しない。
  • 息吹施用によって糖度も上がり、果肉も締まり、光沢良く大玉率も高くなる。

作物別の面白さ(P84~P85)

息吹を施用すると何といっても食味は抜群となる。私のものを食べてくださいといって送ってくださる人もあるが、息吹を使っていないものはやっぱり落ちる。
全ての作物で息吹施用と、そうでないものとは、はっきり差が出て来る。
しかし、不思議な事に生産農家が味を特に問題にしないのである。『味は関係ない』とはっきり言われる。だから下請け農業だと切り返したくなる。
逆に観光果樹園や贈答用、コメのユーザー直売や、生産者ネーム入りの朝市等では、息吹を施用した人は手放す事は出来ない。この食味は、鮮度のよさも伴うのだが、お客様にとっては、ほかでは味わう事の出来ない美味しさと成る。
目の痛くない甘い玉葱、肥料臭さのない大根、皮際まで甘いスイカやメロン、芯まで甘い梨、果肉の繊維が細かい甘い桃。
卵とじにすると感動的な法蓮草、酸味と甘味のバランスが良く、かじって食べる感覚の苺、コメヌカも甘く、糠床に使ったら、漬物まで味が良くなった等、これらの事は息吹農法では普通の事である。
ところが、一部の息吹愛好家の生産農家にとっては、息吹施用は完全な企業秘密となる。
我々にとっては、ひどい例として「あんなものは効き目がない」とか上品なかたは「ハイ、私は作りがへたくそなので、息吹を使っているが効き目はどんなものか」と息吹の事を質問された隣人に、曖昧にそう答える例がたくさんである。
農家には、妙な謙譲言葉みたいなものもあったり、ヘタに息吹息吹と騒ぐと「あの人へたくそな作りなのに」とか「メーカーから宣伝料をもらっている」等の勘繰りをされたくない事もあるようだ。
使っている人が、効き目が分からないような言い回しをするので、効果のない資材と誤解してしまう人もある。
一方では、親しい人に確信をもってから、話をされるお客様もいられる。
10年以上も施用して、丹波黒豆を作っていた山本富夫さんは、昨年の不作の年に白状させられたという。
仲間とともに来社され「息吹の話をしてやって下さい」と言われる。お仲間も「どうも皆と違うのでおかしいと思っていた」と笑い話になる。違いの解る人の輪が出来る。
農業技術指導を全くしない私にとっては、嬉しいひと時となる。

水穂編(P86~P88)

作付面積10アール当り、育苗箱の培土に息吹LD300グラム混合するだけでよい。
通常は量の少ない覆土に予め混合しておく。肥培管理は常識的な方法で良いので、百町歩を越す企業農家から自家用の飯米水田でも、誰でも無理なく施用できる。
登熟が良いので、くず米の量が激減するため、米価が下落している最近でも息吹施用のコストはそれだけで吸収できる。
俗に言うお釣りの来る資材である。
先ず、田植えの前に既にガッシリとした細根で、真っ白の健苗が見事だ。こんな苗見たこともないと言って、喜ばれる人も多い。
田植え後は、近辺の水田と比較しても葉色が薄く上ってくるので、肥料切れと心配する人もあるが、これが本来の健全な色である。
その後、出穂までは息吹のために神経を使わなくても良い。
しかし、出穂と同時に、時間を追って穂揃いが良いのに気づく。
それまでは、葉色が薄かったり、少し草丈が短かったりするので、夫婦喧嘩の起きる場合がある。
「お父さん、あんたインチキ資材を騙されて買ってきたからでしょう」
亭主の好きな赤烏帽子である。息吹によってご夫婦仲まで見えてしまう。結果、有効分茎率の高い、登熟の良いお米が出来る。玄米はアメ色に輝き、精米しても少し黄色い。
当時の岐阜県経済連で、初めて食味計検査をした事があった。八十ヶ所の単協から出された米のうち、1番が息吹米であった。
農協の米穀担当のKさんが、自家用の息吹米を提出したところ、トップの点数であったと喜んでいた。
お礼に会社に米を持ってきてくださったので、私は「息吹米は色が濃いのでわかるよ」といって袋を開けていると「それでか」とKさん。カントリー担当もしているので、目慣れているが精米のダイヤルを間違えたかと思っていたという。
真っ白くないのである。白米も少し着色しているのだ。
これが息吹米の大きな特長で、登熟が良いために、花や実の必須成分でもあり、抗酸化作用のあるフラボノイド色素が多いのが原因である。
田植え前の苗や収穫時の茎をかじっても、サトウキビの茎をかじったときのように、甘さを感じる。

葉菜類(P88~89)
(法蓮草・レタス・小松菜・キャベツ・玉ネギ・ネギ・ニンニク・ニラ・ブロッコリー・大葉・白菜・チンゲン菜・セロリ等)

初めの頃、収穫の早いもので比較したいため、当地では抜き菜と称するカイワレ大根やはつか大根で試してみたりした。
意に反して少し草丈が短い。よく見ると茎の色艶は良いし、鮮度も良いのだが、農家の人は「お疲れ様」と言って、私たちに同情してくれる。
しかし、食べ比べしてみるとびっくりする。息吹施用の方は甘いのに、そうでないものは吐き出しそうにえぐい味がするのである。
いつかこの味がきっと求められる時が来ると思って、今まで続けて来れた。
最近では野菜に残る硝酸態チッソ成分が問題になってきたので、他の方法と比較試験をすると、息吹の独壇場となる。
葉物を有機質肥料施用といって、畜糞主体で栽培してきた生産者にとっては、戸惑いとなる。葉が厚く生育も早いので、今までそれで善しとしてきたのに、むしろ残留濃度が過剰となっている。
世界子孫維持に関する団体が、この簡易測定キットを売り出したら、品切れになるほど売れたという。
息吹の時代がきた。
最も生産者にとっては、株の生育、特に歩止まりや尻太りのよいものが出来るので、連作障害対策ばかりでなく、積極的に使用できる資材である。

果樹類(P89~P90)
(リンゴ・ブドウ・桃・梨・柿・サクランボ・ミカン・イチジク・ビワ等)

一般に果樹の価格は贈答用が基準となるので、大きさ・形・食味・色等、どれをとっても価格に反映される。
息吹を施用すると肉質が緊密になるので、歯ごたえと鮮度もプラスとなる。
根の白さと着色の因果関係によってハダ色も向上する。
サクランボの例では、甘さ、色、鮮度、大きさ、形が揃う事が理想である。
大粒にしようとすると、摘果をきつくするので粒数が減る。
また肥料や潅水で行うと、大味となる。
甘さを上げると鮮度が落ちる、いわゆる軟弱な潤み果となりやすい。
色を鮮やかにしたいのだが、色気が早いと成長が止まる。人間も同じである。
黄金律農業の項で記述してあるので、理解できると思うが、根っことの関係で糖度と着色、大粒が両立する。
リンゴは越年用にはモッテコイの肉質となる。
桃は一個一個の味のばらつきが少なくなる。
梨は芯まで甘く、柿は着色、大玉率、イチジクは鮮度、と生産者の希望がかなう事ばかりである。
でも息吹だけで作物は育つわけではないので、やる事は手抜きをせずに、ということである。

果菜類(P90~P92)
(トマト・キュウリ・ナス・カボチャ・メロン・スイカ・イチゴ・ピーマン等)

つる性の作物で、先ずおもしろいのは、息吹を使うと節間が普通より短くなる。茎が太く、葉も立っているので、キュウリのハウスでは空間が多いように見える。
通常、茎が太いとツル割れしやすくなるので、肥料を抑え目に、というのがひとつのテクニックとなる。
しかし、トマトの例を見ても、茎が太くてもメガネが出ないといわれる。バランスよく生育するのである。
大玉率も1ランク上がるので、箱数も増える。
メロンやスイカは皮際まで甘く、その皮も薄い。だが、甘いスイカやメロンは日持ちが悪かったり、棚落ちしやすかったりするので苦労する。
息吹の場合は通常の栽培方法で、糖度も一度くらいは向上する。
スイカの産地での検討会では9社中で2位以下に0.8度の差をつけたこともあった。
その上、息吹だといえるのはシャリ感である。
歯ごたえこそ、究極の食味だというのが、私の説である。
おいしいそばを食べてみると腰があるというが、それである。
フルーツトマトの大多数が、皮は硬く、甘さはあっても、中心部は軟らかいので、腐りかけを食べると美味しい、というのは邪道の言い訳である。
逆に共同出荷される場合は、何も最高級なものばかりを出荷する必要もない。
その場合は共撰にレベルダウンする事をおすすめしている。結構息吹の特長に気が付いて、実行している人も多い。
ナスやキュウリは半日の収穫遅れで大きくなり過ぎ、ヘタをすると規格外ともなる。でも食味や鮮度は他のものを上回る、色も良く艶も充分な程である。
結果、大玉にして出荷すると、キロ単価は少し安くても、一個当りの手取りは増える。
キュウリの取り残しを朝市に出してみる。果肉がズッシリとしているから、お客さんも料理のレパートリーが増えると喜ばれる。それと、香りのよさも知っていただきたい。
展示会でキュウリの試食をすると、ついてきた子供が、香りがするキュウリに驚いて、近寄らない事があった。
世の中変ですね。

根菜類(P92~P93)
(大根・人参・イモ類・ゴボウ・ショウガ・長イモ・かぶ等)

根菜類は地力そのものの影響がストレートに出てくる。
まず、ハダ色のよさ、形のよさ、畑での歩止りのよさである。
おもしろいのは、大根をおろし金でおろしてみる。息吹のものはすりおろしに力が要らないのに、こんもりと山盛りになっている。一方は容器の中で、水っぽくジュースのようになっている。
これは、含有水分率が1%違うだけで起きるのだ。
一本1000グラムの大根の水分率が89%と90%では、固型分が110グラムと100グラムとなって、10%の差異ができる。この肉質の良さは繊維の細かさも伴うので、大根の食味にも影響するのだ。
ショウガはすりおろしても、繊維が細かいことが判る。
イモ類は油断すると大きくなり過ぎる。
春ジャガは特に注意して、試し掘り等をして収穫日を確かめること。大きくなり過ぎないように。
人参も甘く、ゴボウはあくが少なく、しかも日持ちが良い。 
単価を気にする大規模生産者や、加工用の産地は、収穫日を少しずらして、サイズアップして収穫、出荷するのもおもしろい。
肉質は負けません。

糖度だけが味ではない(P94~P95)

私は野菜や果物の食味鑑定についてのみ、農業関係の先生や技術者等の関係者より感性を持っている自信がある。
以前このテーマで、一行の文章をしたためたことがあったときのことである。
それを見て、メロンの生産グループのリーダーという方から電話があった。
まず、糖度16度以上のメロンを出荷し、それ以下は共同出荷から除外するという事にしたのだが、何処でもやっている事で、さほど問題はなさそうに見えていたのだが、いざ収穫が始まったら、電話してきた言い出し役のご本人のメロンが、基準に満たないものが多く出来てしまったとの事。
悔しくて家族で食べ比べしてみると、自分の作ったものであるから、ひいき目にも評価するが、「こんなにおいしいのに」とのことだった。
そこで、糖度は味の評価の一つの基準に過ぎないと悟った。そして、それを理解してくれる人がいた、との内容であった。
九州でも、それに似た小さな事件があった。息吹施用区と、そうでない区のメロンを比較した時の事である。ご主人は、息吹の効果を全く信用していなかった。
そして、簡易糖度計で調べてみると、特別糖度が高いということもなかった。
だから、そんな調子の良い土改剤があるはずないと断言したのである。
ところが奥さんが、自宅の来客にメロンを振る舞い、比較しながら召味をしていたところ、断然に息吹のメロンのほうがおいしいとの事。
これは直接、ご家族にお会いして聞いた話である。
糖度の高さばかりに気を取られると、生産者はとんでもない落とし穴にはまる。
糖度は味の一つの基準に過ぎないのである。
美味しさは食感や味の濃さ、酸味とのバランス等を総合的に論ずるべきである。
簡易に糖度を計ることはできるが、高いものが一概には良いとは言えない。
フルーツトマトといって、普通六度あれば美味しいといわれるものが、糖度9度〜12度を超えるものも出回っている。
作物は違うが、ニンニク等は平均32〜33度を超えたりしている。
それでもあなたは甘いニンニクと言えるであろうか? ちなみに、蜂蜜の糖度は45度くらいである。

市場でも人気上昇!

評判の高い息吹ブランド

評判の高い息吹ブランド

安心して食べて下さい(愛知県スーパー)

安心して食べて下さい
(愛知県スーパー)

「夏F1」大玉率、玉揃い、ネットの張りが2 ランクUP!! (静岡県)

「夏F1」大玉率、玉揃い、ネットの張りが2 ランクUP!!
(静岡県)

「桃太郎」後段でもますます元気 夏秋トマト 9 月末 (岐阜県)

「桃太郎」後段でもますます元気
夏秋トマト 9 月末 (岐阜県)

第三章 息吹農法賛歌

土改剤屋と呼ばれて(P98~P99)

どんな人でも「土作りは大事だよ、土作りは大切だよ」とおっしゃる。
ところが、土改剤メーカーの社会的序列は低い。種苗や農薬関係者が上席である。
土改剤屋を特別優遇してもらうつもりはない。しかし、人間の心は正直である。その上、
我々のお客様である農家も、本当の意味での土作りが分かっていないことに気付く。
自家製造のよく熟成させた堆肥を施用して、努力する篤農家も大勢存在する。
でもその人達は、全般に農業に対する入れ込みが違うことによる差異の方が大きい。
土作りは文字通り、地味な仕事だと思われるが、私は息吹農法と取り組んで、これ程にも農業が面白く、エキサイティングでお客様の所得にも大きくプラスにする仕事にめぐり会えた事を好運と思っている。
素人の私が、ひたすらアマチュア精神に徹して、大勢の農業関係者とお付き合いさせていただいてきた。その中に見られるのは、社会の縮図そのもの、科学技術の捉え方そのものの問題点である。すなわち文化の進歩、科学の発達が、ともすれば細かいところばかりを見て、原因と現象を取り違えたり、本質を見ずに対処療法的なことばかりに力を注いだりしがちということである。
さらに文化は細分化されて、知識だけ増え、そこに分析的手法の発達が追討ちをかける。
利口な人達にかかると、手の掌と甲のどちらでもがウラやオモテになってしまう。
私は太陽という絶対的なものに手をかざし、陽の当たる方をオモテ、日陰の部分をウラとするのが単純明解だと思う。
複雑系の土壌においては、それだけ神秘性も多く、まだまだ学問として取組みに値することが多い。

大玉ばかり 見事な鈴なり キウイフルーツ(岐阜県)

大玉ばかり 見事な鈴なり
キウイフルーツ(岐阜県)

ズッシリと重く 最高の味に 梨(岐阜県)

ズッシリと重く 最高の味に
梨(岐阜県)

赤松忘国論(P100~P101)

自然林におけるマツタケの人工栽培技術の完成は、関係者の夢である。
髪の毛が薄いのとマツタケが出来ないのは、両方とも誰も被害者はいないが気になるのは本人だけだと茶化している。
実際のところ、マツタケの人工による増産技術は難しい。
現在のところ、一般的なマツタケ山の手入れや管理方法はほぼ確立されている。
マツタケの共生菌も十種類近く発見されている。問題は播かぬ種は生えぬ、である。
マツタケの菌糸帯を如何に作るかである。
私も土壌改良剤のメーカーとして、会社設立のときから興味があり、手入れのよく行き届いた山で毎年テストに立ち会ってきた。
文献も調べてみたりしていた折、所々に、赤松忘国論なる言葉が出てくるので気になっていた。
母の実家の物知り祖父が、赤松と黒松は30年周期で人気を繰り返すのだと、孫の私に山に向かっていろいろ説明してくれた事もあった。
マツタケは松の根っことの寄生が元であり、生きている松の根元にしか活着できない。
椎茸や舞茸のような死物寄生と違って、活物寄生のキノコである。生きている松の根にマツタケ菌が付着し、第二次成長し、代(シロ)を作っていく過程で、松が枯れてしまうし菌が弱いと活着しない。なぜだろうかが、マツタケ研究家のテーマである。
自分もその一人で、余裕があったら研究家の先駆者達と協同で、マツタケ研究所を作るのも夢である。私には息吹という土改剤があるので、勝算はある。
赤松忘国論というのは、林業センターの先生が、保存図書の中から発見して教えてくださった。
明治30年代の帝国大学の先生が、山の尾根筋には赤松しか育たない、水がすぐ切れ栄養もないようなところでは、治山治水を守っていくのには、赤松を大切に育てる事だと、その古い本に記述してあった。
マツタケが増産できれば、赤松の山も手入れが行き届くようになるのではないか。

節水栽培の落とし穴(P102~103)

水管理こそ教えて教えられない篤農技術だと思っている。
しかし、息吹農法の土壌は水ハケと水モチが向上し、植物の発根がバランス良くなるので、水管理が楽になる。
ところが、美味しさが商品価値として重要な果樹や果菜類では、灌水をしぼり気味にして、糖度を上げようとする。常識的といえる。
このところが、息吹農法では重要である。
再三申し上げるが、水が畑の第一の耕作者である。第二に農を業とするからには、生産性の向上も必要といわなければならない。もちろん、のんべんだらりと灌水しなさいということを言っているのではない。
誰もが過度に水を絞ることがどういうことかは、おわかりであろう。農業指導者はどんな種類の作物でも「まずその種子の原産地での状態を知って、栽培しなさい」と言う。ここから手品が始まる。今、種苗店で販売されている種子は生産地に合うように品種改良されているはずだ。種子の氏、素性を知っておくことは悪いことではない。しかし、トマト等はアンデスの山地での状態を想像し野生で育っているものと同じような考え方を導入してくる。
飼い猫や飼育中の子豚を原産地へ放牧したらどうなるか? 同じことではないか?
その結果、節水栽培をしたものは、玉のびが極端に悪くなる。小玉傾向ということだ。
確かに糖度は高くなるのだが、糖分が濃縮されただけの感じとなる。
極端に水分を蒸発させないようにするため、節水栽培された果実類は皮が異常に厚くなる。
乾燥地帯のサボテンを思えばよい。果肉は水分タップリだが、皮は厚いのである。
節水栽培のトマトは、皮は厚く硬いし、果肉は軟らかく、日持ちせず甘いだけとなる。
トマトジュースにしてみると、写真のように上澄みが大きい。息吹農法は水で玉のびをさせる。水の使い方が大事である。(注 107頁参照)
ちなみに、息吹農法トマトジュースは、トマト嫌いな人でも飲めると言って下さる。

薬臭くないセロリ(P104~P105)

息吹農法による土壌改良剤を施用して、通常の栽培技術で収穫されたものは、桁違いにおいしい。このことで、訴えたいことの一つが、生産者は自分の生産物の価値を知りなさいと言う事である。自分が作ったものだから、他のより美味しいと思っている。
お隣の方が出来が良いみたいな事を言っても、「ああ、あちらサンは手間が多いからね」とか、「チョット土が良いからね」等と、話し方は穏やかだが、負けん気充分である。
同じ地域で同じ品種を作っていれば、そんなに味が変わるはずがないと思っている。
だから、消費者の心をつかめずに、出荷規格にばかり気を使って、味や鮮度の大事な部分がおろそかになる。
静岡県の浜名湖近辺は、いろいろな作物が収穫出荷されているところだ。ハウスでは、メロンとチンゲン菜等の中で時期的にセロリが栽培されている。独特の薬臭いような味が当たり前だと思っていたが、それがとんでもない間違いだった。
おじいちゃん「こんな味はセロリではないよ」
お父さん  「息吹で品質も収量もよくなっているよ」
お子さん  「この味なら僕でも食べられるよ」
甘い味がするのである。
おじいちゃんは経験的に、お父さんは経済的に、お子さんは素直に、美味しいと評価したのである。
このようなセロリなら、もっと需要が増えるのにと、出荷担当者にも説明したが、味は出荷には関係ないと、何処でもある結論。
磐田郡豊田町の澤田とみ子さんはスーパーの朝市へ野菜を出荷しているのだが、一週間程休んでいた時があった。
そうしたらお客さんが突然自宅へ訪ねてきて「お宅の小松菜でないと飼っているウサギが下痢をするので」と、わざわざ買い求めていかれたそうだ。
知らない人が聞いたらどう思うだろうか、と言って皆で大笑いをした。

チョット信じられない話(P106~P107)

平成五年の日本列島は、冷夏長雨の異常気象で、米不足が起き、その後、食糧法が制定されたりして、農家に大きな節目となった年である。
そんな最中の9月30日に、ある先生が書かれた『地球を救う』という100万部近くも売れたという本に記述されていた、岐阜県の丹生川村のトマト生産者を取材にきた雑誌社があった。
結論は収穫ゼロ。無残にも腐り果てた茎だけが、ハウスにぶら下がって残っていた。
前日、隣町のJAの担当者に案内してもらっていた、無名の当社のお客様のハウスとは、対照的な事であった。息吹を施用したお客様のトマトは、いつもの成り方だったからだ。
「貴社が良いとこだけ案内したのでは」と質問されたので、息吹を施用していないハウスを見てもらうと、やっぱりダメであった。
この時のことが、雑誌に「チョット信じられない話」というタイトルで載ったのである。
小さな記事ではあったが、物の程は読者の判断に任せるという、レポート風にまとめてあった。
この取材があったことは忘れていたのだが、翌年の1月6日、仕事始めの日から問い合せの電話が鳴りっぱなしとなった。
おかげで、一遍に大勢のお客様が増え、今でもその当時お問合せいただいた方や来社された方の多くが、息吹を続けて使用して下さっている。
私は、有名な先生は現場を見ていないなと思った。
地球を救うどころか、一軒のトマト農家をも救えなかったのにどう言い訳するのでしょうか。
私は代理店の皆様には、息吹はブームを作る資材ではないよ、定着してじっくりお付き合いさせていただくための商品ですよ、と訴えています。

汎陽科学_井上-tomato

上澄みが少ない(右側 息吹トマト)

北海道余市産
「紀文フードケミファ限定販売品」

節水栽培による甘いトマトジュースと、息吹農法によるおいしいトマトジュース。
比べてください。(P103 参照)

目の痛くない玉葱(P108~P109)

私がバイオベンチャー企業として会社を立ち上げる動機となった出来事の一つに、玉葱がある。
今は大分減ったが、岐阜県の本巣地方では、当時はかなり生産されていた。
農家の家庭菜園で出来た玉葱を持って、八百屋をしていた父に見せたら、こんな大玉、誰も信じないだろうが、お前が作ったのではなく、お前の試作した鼻薬で出来たのだから、本物だ。しかし自分が先頭にたたないと、誰も動かないよと後押しをしてくれた。
近所のますや種苗店のご主人や県庁、農協へ行って、評価をしてもらったが、600グラムもある玉葱は規格にはないが、姿、質、重さともに申し分なしとの言葉だった。
そして、召味をしてみると、これまた驚く程の美味しさである。
糖度は8度くらいであるが、シャキシャキしており、女性陣に教えてもらったら、水さらしなしでも、食べられるとのことであった。
玉葱、ニンニクやニラ等、ゆり科の食用植物で、血液さらさらという作用のある硫化アリルが主成分である。これが臭いや目に刺激をするもととなるのである。
物知りの人は、無臭ニンニク等の存在を説明されるが、品種が全く違うのである。
熊本県の水俣の橋本さんは、この玉葱を、良い値段で契約できたといって喜ばれた。
息吹農法の玉葱は、誰でも感動して食べていただける。
十年くらい前に、東京で大手の外食産業や漬物メーカー、市場の人達を前に、試食会をした時に、衛生上のために十分くらいは水洗いをするのだから、目の痛さ等は関係ないと言われてがっかりした事がある。
ちなみに、水さらしなしでも目が痛くないのは、なぜか?
それは先ず細胞密度、即ち肉質が緊密であることから、切っても細胞破壊が少ない事。
次にミネラル吸収が良いので、ビタミンB等の制臭作用を持つ成分が、多いことが作用している。
今では、中国から大量に、良い玉葱が産地の淡路島へ輸入され、国産よりはるかに安い価格で流通している。息吹玉葱で迎え撃ちをしてみませんか。

野菜が語る、食べる喜び(P110~P112)

その頃では、まだ珍しかった有機農産物を有利販売している仲買さんにお邪魔した時のことである。
青森産の息吹農法長芋を持参し、試食をしていただいた。「ネバリが良いでしょう?」と言うと、「卵と混ぜたりしたら、同じじゃないか」と言われ、ガッカリしたことがある。
天然物に近い農産物を、人の力と知恵で効率よく生産された息吹農法に、強い自信を持っている私にとって、少し淋しい思いをした。それでもその会社も今では、特長のある仲買さんとして、地域で有名になっている。
この長芋のネバリは、名物のトロロ蕎麦店で採用されていた。同じ作物でも作り方によって、味はもちろん、成分も違ってしまう。
薬草の権威の先生によると、薬草を人工栽培すると、薬効成分が消えてしまうことが多いと言われる。他の先生も、アガリクス茸等と言うが、生産ロットによって全部薬効が違うと言われる。しかし、ブームになった。
食物は、人間の身体のエネルギーや細胞のもとになるものであるから、農産物の規格よりも、素材の中心をなす内容、成分等に注意を払う必要があろう。
米穀店の担当者が、お客様に「息吹米をいただいてから、子供のアトピーが出なくなった」と言われ、びっくりしたと話していた。
店頭では、息吹農法と千葉産コシヒカリと表示してあっただけなのに。
息吹のキュウリを食べてみると、今まで食べていたのは何だったのか、と言われる。
ほうれん草でも、最近になって残留硝酸態チッ素が身体に悪いということで、問題になり出した。これは、茹でると溶け出しやすいので、ほうれん草は茹でてからの調理が良い。
ほうれん草名人の森田英治さんは、「しゃぶしゃぶほうれん草」と言ってPRしている。
私は息吹のほうれん草は、特に卵とじ料理をおすすめする。
おいしいですよ。
血液サラサラ玉葱。
アクが少なく、香りの良い息吹ゴボウ。
それらのものが求めようと思えば、どこでも自由に手に入る、そういう時期到来が私の夢である。
余談であるが、厚生労働省の食べ物の栄養価やカロリーリストを元に、学校や病院の給食の献立メニューが作られる。栄養学の先生に「どこの農産物で分析しているのですか?」
と聞いたら、先生は笑っていた。

 (P112左側)

息吹施用による残留硝酸態チッ素比較試験
(平成16 年1 月21 日 岐阜市)

息吹施用による残留硝酸態チッ素比較試験

※画像あります。
下に訳注

根の勢いは一目瞭然!!( 右側 息吹区)
施用品種:フィーリング125(雪印種苗)
施用方法:播種前に、息吹LD を本畑の畝表面散布のみ

  • 息吹区の根部濃度は高いが、葉部は30% 近く低い。
  • 体に害があるのは、2,000ppm 以上とされている。

息吹のファンだよ(P113)

その一

岐阜県飛騨市の蒲酒造さんの酒造米ヒダホマレは全部息吹農法である。そのお酒はJALのファーストクラスの機内食にも採用されている。蒲酒造さんとは、もう永いお付合いだ。
冬季間、蒲酒造へ手伝いに行く、同じく息吹農法のトマト名人の坪根邦一さんが、たまたま居合わせた時、「ちょっと見てよ」と、2ラインある精米機を見せた。一方は友人の息
吹米が出て、胴割れが全くない。一方は米粉に胴割れ米が混じっている。
発酵の専門家である岐阜大学の河合啓一教授に伺ったところ、胴割れがないのはおいしい酒を作る一つの条件、と言われ自信を持った。
契約農家も息吹で収量も増える、と喜んでいる。私のおすすめは、「蒲酒造場・白真弓の純米酒を冷酒で」です。フルーティーな香りとワイン風の味、イケますよ。

その二

私は、農産物の作り方は知らないが、味覚には自信がある。
そんな中で、食事療法として毎朝梅干を一個食べている。特別に友人に頼んで、デパートで南高梅を取り寄せてもらう。もちろん薄塩である。
和歌山県の峰宏好さんから送っていただいた梅は、果肉もたっぷり、皮は少し薄い絶品であった。
峰さんには一度もお会いしたことがないのに、今年突然十六年も息吹を使っているがいつも発注の電話だけで申し訳ない、大変良いから… と言付けの電話。こういう類いのお電話は、他が不作なのに余計に差が付いた年であろうと社員一同喜んでいる。

その三

山形県のサクランボ農家に息吹ファンが多いのは、天童市の堀川恒宏さんのお陰である。
万寿園という観光農園を経営しており、何となく息吹は良いので、と言ってご使用いただいた。
ある年、隣の園地を訪れたお客さんが、堀川さんの園地に入り込み、大声で「おーい、こっちの方がおいしいぞ」と言って仲間を手招きしている。こちらは違う園地ですよ、と断ったが、堀川さんの園地で試食したそのお客さんが、おいしいから、と売店のサクランボを買って帰った。ところが、試食のと違ってまずい、というクレームが出てきた。売店のは、知人から仕入れたサクランボであった。翌年からは知人にも息吹を使ってもらうことになった。

その四

千葉県の岩立幹雄さんは、おもしろい人である。
年中日本中をあちこち回って、情報や勉強、そのついでにお米の販路開拓もしている。
大潟村の佐藤和夫さんいわく、稲作農家の正味年間稼動日数は四ヶ月だよと言っていたが、さもありなんである。
水郷小見川で深水栽培による除草剤も使用しない有機栽培生産者で、コシヒカリ研究会を作って集団で有機JAS認定も取得した。
都内の店頭精米店で息吹米に出会ってからのお付合いである。無農薬栽培を始めた頃は皆に笑われ、変人扱いを受けたと言っているが、今ではライオンズクラブの会長を引き受ける程になられた。

その五

年末の超多忙の最中にお電話をいただいたのが、三重県の森田英治さんである。大手スーパーの管理職を捨て、家庭の事情で農業を継がねばならぬと言う。畑二反と水田少々という。
「それではメシも食えませんね」と言ったら「そうなんです」と。
図書館でいろいろな本を20冊程読んだが、ぜひ、私にたとえ5分でもいいから会いたいとのことだった。
私はほうれん草の移植栽培をすすめた。すでに熊本県で実績があり、雑誌にも載っていたので、公知の情報として教えてあげた。
近くに若林勝先生がトマトハウスで葉物を作り出荷されているので、先生をご紹介したところ、弟子入りをされた。
今では三重県の脱サラ農家の会長をされている。新聞にも大きな記事が出ていたので、
嬉しかった。
脱サラ農家の成功の秘密は、前職で得たものを農業にも活かすのがコツである。森田さんはスーパーの店長をしていたので、経済に明るいし、販売方法や資材の仕入れはお手のものである。
また、脱サラではないが、左官の頭領からチンゲン菜を始めた梅田進さんの例もそうである。
歩止り99%で、当社から10分くらいの所にあるので、よく見学させてもらっている。
そうです、左官の本能と言っていい程、ハウスの床仕立てがきちんとしているので、潅水ムラによる生育のバラツキがでない。息吹によって食味、鮮度も抜群となっている。
異業種からでも必ず自分の持ち味を活かす経営。これが成功の簡単な秘訣です。

(P117左側)

平成14 年10 月9 日の朝日新聞に掲載された森田さんの記事と写真

平成14 年10 月9 日の朝日新聞に掲載された森田さんの記事と写真

(P118)

息吹農法グレードLD 息吹農法LDミネラル

汎陽科学_井上-著者

著者略歴

井上 錦一

昭和19年岐阜市生まれ。
県立岐阜高等学校卒。昭和42年明治大学法学部卒業後
化学品専門商社、外資系接着剤メーカー等に勤務。
昭和59年、汎陽科学株式会社を設立。(現資本金2,750万円)
現在に至る。

著書に
  「息吹農法」     農山漁村文化協会 発行
  「野菜が語る」        みき書房 発行

会社 汎陽科学株式会社

岐阜市芥見野畑3丁目58番地の5
TEL 058−241−2401 FAX 058−241−2287
http://www.hanyokagaku.com

土が語る 黄金律と息吹農法

平成16年10月5日 第1刷発行
平成17年4月15日 第2刷発行
平成18年3月3日 第3刷発行

著者 井上 錦一
発行所 汎陽科学株式会社

岐阜市芥見野畑3丁目58番地の5
TEL 058−241−2401 FAX 058−241−2287
http://www.hanyokagaku.com
E-mail:ibuki@hanyokagaku.com

印刷・製本  協同印刷株式会社
表紙デザイン  岩田 理恵子
いかなる形式においても本書の全部または一部を複製し利用することを
禁じます。これらの許諾につきましては弊社までお問い合わせください。 

お問い合わせ

お問い合わせ、ご相談、ご質問につきましては、こちらのフォーム、
またはお電話からお気軽にお問い合わせください。

058-241-2401 [受付時間] 9:00~17:30
[定休日] 土曜日、日曜日、祝祭日、他、年末年始

powerd by formy(フォーミー)

TOP